美しいすはだのためには、道具にもこだわりたい。上質な手仕事によって生まれた逸品は、すはだの手入れをますます充実させてくれます。
そのなかでも、日本産の上質の化粧筆として知られているのが、広島県安芸郡熊野町で作られている「熊野筆」です。
熊野筆の歴史
熊野筆が誕生したのは、およそ江戸時代末期だといわれています。広島藩の産業奨励策もあり、熊野町では筆づくりが始まり、その技術が根づいていきました。

書筆から始まった熊野筆は、学校などの教育現場から使われたことから、広まっていきます。そして、その技術を生かした化粧筆が作られるようになったのは、戦後。化粧品の中に入っている付属の筆を作られたことから、始まったようです。
そして、時代の流れのなかで女性の活躍する舞台が増えるとともに化粧品が進化し、さまざまな用途に合わせた筆が作られるようになり、熊野の化粧筆はどんどん発展していきました。
動物の生まれたままの命毛(いのちげ)を使う熊野筆
高い品質を誇る化粧筆として、国内外で高い評価を受ける熊野筆。この筆の一番の特徴は、素材となる動物の毛の毛先をカットせずに作られるということ。


熊野筆の穂首となる部分の毛は、リスやヤギなどの生まれたままの「命毛(いのちげ)」と呼ばれるもの。この命毛をそのまま使うことで、繊細な筆に仕上げることができます。
触れると穂先が丸く感じられ、触れているのかいないのかわからないくらいのやわらかさ。なめらかな肌触りに思わず頬ずりしたくなるほどの優しい毛先です。
熊野筆は、熊野町で生まれることが絶対の約束
職人が手作りする熊野筆。その工程はなんと、73もあります。
筆にするのにふさわしい良質な毛とそうでないものを手作業で振り分け、束にしていきます。動物の毛は、その年のよ気候や環境によって毛質が変わるため、善し悪しは職人の経験が頼りです。その他、長さを揃えたり、規定の太さに束ね直し、毛を整え糸で巻き止める……文章にすると簡単ですが、これらの作業には熟練の技とカンが必要なのは言うまでもありません。

定められた工程に沿って作られたものが「熊野筆」となるのですが、その中でも特に欠かせないのが、必ず穂先を熊野町内で完成させるということ。
原材料を県外から持ち込んでそろえることはあっても、筆を作り上げるのは必ず熊野町内でなくてはいけません。
熊野筆のふるさと、熊野町は、日本一の筆の生産量を誇る町。この町で、作り上げられた筆だけが、「熊野筆」の称号を得ることができます。
熊野筆は、日本国内で丹念な工程を経て作ることが必須。まさに伝統とこだわりのつまった、メイドインジャパンの良質な道具のひとつといえるでしょう。
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田下愛
フリーランスライター 雑誌、書籍、Webメディアで、政治からサブカルチャーまで幅広いジャンルの仕事をこなして奮闘中。著書に「選挙はエンターテイメントだ!」(HK INTERNATIONAL VISION)がある。オーガニックコスメ・マニアで、石鹸で落ちるメイクとシンプルなスキンケアを実践中。趣味は、オーケストラでヴァイオリンを弾くこと。
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