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昔ながらの製法を守る東京・中村橋の老舗味噌屋「糀屋三郎右衛門」

2015.07.13

みそ屋, 東京, 発酵, 糀屋三郎右衛門

その昔、1951年頃までは、東京にも140軒ほどの味噌屋さんがありました。しかし、東京都味噌工業協同組合に加入し、正式な味噌屋として営業しているのは、現在わずか15軒。その中でも、発酵に関する研究を続け、自家製味噌の仕込み方を次世代へ伝えようと精力的に活動しているのが、「糀屋三郎右衛門」。
 
西武池袋線の中村橋駅を出て、住宅街を歩き進めていくと見えてくる「昔みそ」の文字が目印。都内で唯一の味噌蔵と言われ、遠方からもひっきりなしに人がやって来ては、出来立てのお味噌を買いに来る評判のお店です。
 
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今回は、こちらの七代目、辻田雅寛さんにお話を伺いました。

昔ながらの製法を守る、地元に根付いた味噌屋

「糀屋三郎右衛門」は、機械で管理された造り方ではなく、「大豆を蒸して冷まし、塩きりこうじと地下水と混ぜ、担いで運んで大きな木樽に入れ、最後に空気を抜くために足で踏む」という、昔ながらの製法を大切にしています。
 
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七代目の辻田さんによると「この工程は、大豆をつぶしたものと塩とこうじを混ぜたものと水分、味噌造りに必要なものを足しているだけ。家庭で作れる味噌と変わらない製法なんですよ」とのこと。
 
けれど実際は、歴史ある老舗ですから、ひととつひとつの素材へのこだわりは並大抵ではありません。こうじは自家製3日こうじ、大豆は富山県で取れる「エンレイ」、塩は伯方の塩、そして水は地下から井戸で組み上げた天然水を使っています
 
これらで作られる米味噌や麦味噌や玄米味噌、つぶ味噌や、こし味噌などバリエーション豊かな味噌たちは、ネットを介した遠方からの注文も多く、味噌蔵にもひっきりなしに地元の人が訪れては「お味噌くださいな」と、買っていきます。
 
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辻田さんは、醤油や日本酒など、発酵に関する研究をたゆまず続けながら、小学校で味噌造りのワークショップを開いたり、自身の蔵を見学地として開放したり、幅広い年齢層へ向けて、発酵とは何かを広めています。
 
「たとえば日本酒の種類のひとつ『大吟醸』は、美味しいと言われているものは大体、雑味を取ったものが最終形になります。でも僕は、味噌の旨みはコントロールできないと思っているんです。日本酒と違って、雑味がないと、味に深みも出ません」
 
味噌造りの工程は、過去の醸造家や職人さんたちが、何千回何万回も試しては失敗してきた、ノウハウの蓄積の賜物。人間の力でコントロールできるものではないと言います。
 
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また近頃は、食に対して安心・安全を重視する傾向が強くなっていると同時に、発酵食品への注目度が高まっていると、辻田さんは感じています。
 
「日本は、世界的に見てもすごく発酵食品が多い国です。最近は、外国が味噌に注目しているから、逆輸入的に日本の発酵食品が見直されています。でも、味噌自体は日本で昔から作っているし、あって当たり前のものです。その実態を、日本人が知らないっていうのは、ちょっと寂しいね。いま注目されているなかで、少しでも味噌や発酵のことに興味がわく人が増えたらいいなと思います。」
 
そう、味噌やこうじは、日本古来のもの。じつは暮らしのあらゆる土台を、発酵の力が支えているのです。
 
次回から味噌やこうじがどのようにできるのか、その性質と使い方、効能や歴史などについてご紹介していきます。

このお店のこと

糀屋三郎右衛門
  • 住所:東京都練馬区中村2-29-8
  • 営業時間:9:00~17:00
  • 定休日:土日曜祝日(不定休)
  • 最寄駅:西武池袋線「中村橋駅」から徒歩10分弱
  • アクセス:千川通りを池袋方面に東進していただき、中村北4丁目交差点を含み4つ目の交差点を右折したところ。「昔みそ」ののれんが目印。
  • 参考価格:こうじ・雪の花 200g入1袋 482円、白米みそ 中辛赤色みそ 850g入1袋 1,744円
  • 電話番号:03-3999-2276
  • 公式HP

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Amika

Amika

シンガーソングライター、CM音楽の歌作詞作曲、ライター、パン・料理研究家。出産を機に子供と同じ卵乳にアレルギーがあるとわかり、日常から卵乳製品を使わない料理やマクロビオティックを実践。中医学(薬膳)も学ぶほぼベジタリアン。作詞作曲のかたわら、学び続けてきた自然酵母のパンと焼き菓子、妊娠出産授乳期や養生食、狭心症や糖尿病のための食事、菜食と肉食ごはんの両立、アレルギー対応食の講座を担当。

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