毎年、春と秋に行われる、大規模な益子陶器市。わくわく気分で、いざ!と臨み、見渡す限りの素敵なうつわに囲まれ、幸せな気分に浸ることができます。

しかし、益子はただうつわを買いに行くだけではもったいない所です。
うつわを買うことばかりに気を取られていると気づかない、味のある風景が益子には散らばっているのです。そこで、益子とうつわのルーツを探るべく、陶器市を離れてお散歩をしてみました。
隠れスポット その1 :心地よい風を感じる「濱田庄司氏旧邸」

こちらが、陶芸家の故 濱田庄司さんの古いお屋敷。「陶芸メッセ・益子」という聖地を思わせるゾーンへ入ると、スロープ状になっていて濱田さんの旧邸へ誘われます。

どうやらみなさん遠目で確認はするものの、近くまで来て建物を見学される方は少ない様子。

茅葺屋根のお屋敷は一般開放されているため、どなたでも家の中まで上がらせてもらうことができます。

お邪魔してみたところ、ひんやりと涼やかな風が舞い込んで、さきほどまで人ごみの中にいたのが嘘のよう。縁側に腰を下ろしたら、そのまま長居してしまいそうな落ち着く空間でした。
隠れスポットその2:100年近い歴史ある「太平釜?」
市場から少し離れたところには、普段は入っていけないような人家とも窯元とも思わしき場所には、太平洋戦争以前に築釜された相馬系の古い登り釜がありました。

こんなに大きな釜で、どんな風に完成するのだろう?と考えながらも、親切な説明書きによって、うつわを作る過程をほんの少し伺い知ることができました。

ちなみに、この窯元の情報はインターネット上にもあまり出回っていないようです。まさしく「隠れスポット」ではありますが、散歩中にたまたま辿り着いたなら、古き職人たちに「ちょっと寄って行きなよ」と言われているように感じられるかもしれません。
隠れスポット その3 : 「濱田庄司記念 益子参考館」で異世界へタイムスリップ
陶器市会場を後にして、少しばかり山あいに登ると、ひっそりと佇んでいるのがここ「益子参考館」。

はじめに登場したのは、陶芸家・濱田庄司さんの自邸であり工房。ご生前の頃、濱田さんが陶芸活動をする上で参考にした、世界各国のぬくもりある品々や、ものづくりを突き詰めていったご本人や友人らの作品がそれぞれの蔵の中に展示されています。

訪れたのはゴールデンウィーク真っ只中でしたが、訪れていた人々はちらほら。驚くほどゆったりと時間をかけて”ほんもの”と向き合うことができる贅沢な時間になりました。

なにが ”ほんもの”かというのは、人それぞれに好みがあるのでしょうが、作る喜びや楽しさ、見るたびに新しい発見があったり人の体温が感じられたりするものたちは、すはだで触れて感じて心地よく、いつまでも継がれていくものなのでしょう。
広大な敷地の中には新緑が溢れ、自然と調和のとれた一帯の景色は、古くからある懐かしい場所へとタイムスリップしたような心地になりました。
番外編 江戸時代寛政年間創業「藍染 日下田藍染工房」
もうひとつ、散歩の最中に、ご紹介したいところを見つけました。

うつわではありませんが、益子町のメイン通りの入り口に位置するこの場所。随分と歴史ある藍染工房なのだそうです。
茅葺屋根の下は一般の住居ではなく藍甕(あいがめ)のある工房になっており、職人さんが染色を施していく過程を見学することができました。

益子の町は陶芸だけではなく、ものづくりに馴染みがあり、町並みや家々の手入れを重ねながら人の手で暮らしを作り続けている場所でした。

ちょっとしたお散歩も、町やそこに暮らす人々の生活が少し垣間見える、そんな益子のゆったり散歩。益子へ訪れたなら、少し寄り道するのもおすすめですよ。
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中條美咲
昭和64年1月3日 長野県生まれ。 2014年 暮らしの中で出会ったものや人、そこから感じたことを文章で伝えていきたいと思い 「紡ぎ、継ぐ」というブログを始める。” 見えないものをみつめてみよう。” ということをテーマに、書くことを通じて多くの出会いに触れながら、感じる力を育てていきたい。 現在は「灯台もと暮らし」と「PARISmag」にてライターとして活動中。
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