日本人のソウルフードとも言える、お味噌汁。一汁三菜という言葉が表すとおり、日本人の食卓には必ずと言っていいほどお味噌汁は食べられてきました。
一時は消費量が右肩下がりだった味噌ですが、近年はその効果が見直され、自宅で作る「手前味噌」に興味関心のある層も、じわりじわりと増えています。

『味噌力』(かんき出版)の著書・広島大学の渡邉敦光教授に、味噌が持つ基本のチカラについて、伺いました。
味噌の力① 血圧の上昇を抑える
発酵食品、特に味噌は、その食塩の含有量を気にして「しょっぱいから血圧が上がる原因になるのでは……」と考えている人も多いのは事実。たしかに味噌を作る際は、塩が必要です。けれども、味噌は血圧を上げるどころか、高血圧予防になるという実験結果が出ているのです。
同量の塩を加えた食塩水と味噌を与えたネズミで、血圧の数値を測定したところ、同じ塩分濃度でも味噌を食べた方のネズミは血圧がまったく上がらなかったという結果が報告されています。

ちなみに血圧は、上がりやすい感受性の人と、上がりにくい非感受性の2タイプの人がいます。体質によっては、どうしても血圧が気になるということもあるでしょう。その場合は、お味噌汁にたっぷりの野菜を入れていただくのがベスト。
かの有名な将軍・徳川家康は、当時にしては珍しい長寿で、75歳まで生きていました。それは、家康が5種類の葉物と3種類の根菜類が入った、たっぷりのお味噌汁をよく食べていたからだ、という説もあります。
味噌の力② 様々なガンの予防
いまや、日本人がかかる病気の代表ともなっているガン。味噌には、ガンの発生を抑えるはたらきもあるのです。
そもそもガンは、からだの細胞が持つ遺伝子が傷つけられ、損傷を受けた遺伝子が誤って増殖することから始まると言われています。さらに、食品に発ガン作用のある物質が含まれている場合もあるのです。
味噌には、発ガン成分の生成を阻止するはたらきや、損傷した遺伝子の複製を止めるはたらきがある物質が含まれていることが分かっています。
例えば、イソフラボン。女性の間ではよく名前を聞く成分のひとつですが、このイソフラボンが持つ、エストロジェンという女性ホルモンとよく似た物質が、乳ガンの増殖を止めるはたらきがあるとされています。
他にも、味噌にはフィチン酸やタンパク質分解酵素阻害成分であるBBIという成分が含まれており、ガンの予防に、お味噌汁は適任ということが分かります。
味噌の力③ 放射線予防にも味噌が効く
渡邉先生の著書の中に、こんなエピソードが書かれています。
第二次世界大戦中、長崎に原爆が落ちた後、人々は貧困と食糧不足のため、十分な食事をとることができませんでした。そこで、手前味噌で作ったお味噌汁を飲んで、飢えをしのいだといいます。
そして戦争から月日が流れ、被爆した人々の幾人かは、寿命を全うして亡くなりました。被爆していたにも関わらず、発ガンすることなく、健康なまま亡くなったのです。その理由は、味噌汁を飲んでいたからではないか、と言われているのです。
もし、これが本当に味噌の力であれば、味噌こそ日本が誇るスーパーフードではないか?と驚かされるエピソードです。現代では、原爆が落ちた頃と同じ放射線量を当てたマウスで実験をし、実際に味噌を食べたマウスの方が長生きするというデータも出ています。
さらに、味噌は味噌でも、1年以上熟成させた味噌が、より効果的だという結果もあります。味噌が茶色いのは、メラノイジンという色素成分のよるものですが、このメラノイジンは強い抗酸化作用を持っており、味噌が放射能を除去するはたらきがあると言われているのです。
1日3杯、お味噌汁を飲む習慣を

生活習慣病の予防にもなる上、気になる放射線からからだを守る効果もある、お味噌。1日3杯、お味噌汁を取り入れた食生活に変えることで、その効果が期待できます。今すぐに病気を予防してくれるのではなく、長期的に見たときに、からだを守ってくれるお味噌のチカラは、日本人が誇るべき食文化のひとつです。
今日から、まずは1週間だけでも、お味噌汁を飲む暮らしを、始めてみませんか?
(参考:『味噌力』渡邉敦光著、『豆類の健康機能』農林水産省食品総合研究所 食品機能部 機能成分研究室長 津志田藤二郎)
お話をうかがった人
渡邊 敦光(わたなべ ひろみつ)

1940年福岡県生まれ。熊本大学卒。九州大学大学院博士課程修了。広島大学原爆放射線医科学研究所で助手を経て教授。2004年に退官し、現広島大学名誉教授。広島大学原爆放射線医科学研究所並びに医学部非常勤講師。理学博士、医学博士。専門は実験病理学、放射線生物学を主たるテーマに長年にわたって、ガンを予防するための研究を続けている。
1940年福岡県生まれ。熊本大学卒。九州大学大学院博士課程修了。広島大学原爆放射線医科学研究所で助手を経て教授。2004年に退官し、現広島大学名誉教授。広島大学原爆放射線医科学研究所並びに医学部非常勤講師。理学博士、医学博士。専門は実験病理学、放射線生物学を主たるテーマに長年にわたって、ガンを予防するための研究を続けている。
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