TOP » ピックアップ記事 » 一家に一こうじを当たり前にしたい。宮崎県小林市の「糀や」杉元祐子さん
ひと食べる
一家に一こうじを当たり前にしたい。宮崎県小林市の「糀や」杉元祐子さん
2015.12. 9
もともとお米屋さんだったお店を、2011年からこうじ販売とワークショップ、さらにはカフェとしてリニューアルした「rice shop 糀や」さん。お店を切り盛りする宮崎県小林市出身の杉元祐子さんは、ミュージシャンを目指して上京するも、実家から送られてきた甘酒をきっかけに、発酵の世界に魅せられ、地元に帰ってきました。
杉元祐子さん
発酵の何が杉元さんを呼び寄せたのか? 知れば知るほど奥が深い発酵の世界と、杉元祐子さんの今まで、そしてこれからチャレンジしたいことを伺いました。
甘酒をきっかけに拓けたこうじの世界
杉元祐子さんは「糀や」さんのリニューアルオープンとともに宮崎県小林市へ戻ってきた、いわゆるUターン。そのきっかけは、お母さんから届いた甘酒でした。
「母から突然、『甘酒を凍らせて食べると美味しいよ』と書かれたメモと甘酒が送られてきました。今思えば、その頃から母は、お米の魅力をもっと広く深く知ってほしいという思いから、こうじを勉強し始めていたようです」
「私はもともと甘いものはそんなに得意ではなかったので、試しに黒ごまのペーストと凍らせた甘酒を混ぜて食べてみたんです。そしたら、その美味しさに衝撃が走って。『なんだこれ!?』と思いました(笑)。
その日から、甘酒にいろんなものを混ぜて食べるようになり、どんどんこうじや発酵の世界に引き込まれていきましたね。ここで得た経験が、シャーベット状の『生甘酒』のアイディアにつながっているんです」
プレーンの「生甘酒」(1個200円)。黒ごま味、生姜味、きなこ味など全5種類
東京で暮らしていた杉元さんは、30代に入ってから、ミュージシャンとして活動を続けるべきかどうか、次第に迷うようになりました。そんな中、日に日に募るこうじへの興味関心が抑えきれず、1年間宮崎県へ帰り、こうじの勉強をしたといいます。
「本当は、この1年学んだことを持って東京へ戻るつもりだったんです。でも、勉強しながら『もしかしたらコレは宮崎から発信した方がおもしろいかもしれない』と思うようになって、2011年には東京から宮崎へ戻って来ました」
ずっと続けていた音楽も、すっかり辞めてしまうのではなく、今でも宮崎の仲間たちとライブを開催することもあるといいます。
「東京での活動は辞めましたが、音楽そのものは生涯のものだと思っているので、これからも続けていきますよ。こうじの世界はすごくおもしろいから、仕事としても楽しいし、日々発見ばかり。やりたいことは、まだまだいっぱいあります」
こうじは温度管理が命。そのため、夜は数時間に一度起きて、こうじを混ぜて発酵温度を下げなければなりません。その合間をぬって、スタジオで楽器を演奏したり、ライブの練習をしたりするといいます。
「手作りにはとことんこだわりたいんです。音楽もそうですが、ゼロからものを作るのが、もともと好きなんです。だからこうじも音楽も、興味がある人やそれが好きな人たちが自然に集まって来られるように、ずっと続けたいと思っています」
田舎暮らしと都会暮らし、どちらもおもしろい!
高校卒業後、すぐに上京したという杉元さん。10年以上続けた都会ぐらしから、田舎へ戻ってくることに抵抗はなかったのでしょうか。
宮崎県小林市の風景
「こっち(宮崎県小林市)に帰ってきてしばらくは、夜が長いことに苦しみました。夕方になると人もほとんど外出しないし暗いし、もう寝るしかない。でも、東京なら、夕方は『まだまだこれから』な時間です。夜にフラッとひとりでカフェに行って本を読む時間や、ビールを飲みながら繁華街を歩いて帰る時間が、すごく好きでした。もう二度とここを離れるものか!と思っていましたね(笑)。
夜の街に繰り出したい衝動に駆られることはあります。でも、田舎暮らしも想像以上に超おもしろい。朝早起きして、犬と一緒に散歩に出たり、川へ行ったりします。もともと地元だからということもあって、周りからあれこれ言われることもないし、好きなように過ごせる心地よさを感じます」
こうじをもっと日常に根付かせたい
杉元さんは、「糀や」の新商品として、生甘酒を小分けにした、100グラムの使いきりタイプを開発しました。これを持って、県内外へこうじを広めに活動したいといいます。
「私は、オーガニックとかマクロビオティックに大賛成というわけではありません。それに、ファーストフードを真っ向否定するつもりもないんです。現代の食生活と、こうじが融合できるのが、ベストだと思っています。
もし、お昼にコンビニのご飯を食べたら、夜は自分で作った味噌汁を飲んで帳尻合わせる。それくらいの気軽さでいいんだっていうことを、もっと広めたいんです」
「からだに良いものは、確かに良いですよ、無農薬野菜を食べられるならそれを選んだほうがいい。でも値段が高かったり初心者には敷居が高かったりするし、そういう現実が私には辛いです。
でも、もともとこうじって、珍しいものでも特別なものでもないんです。だから、こうじが一家にひとつ、当たり前にあるような家庭を増やしたいなって思っています。無理のない範囲で自然に。こうじは暮らしに馴染むべきものと、私は定義づけていますから」
日本人の暮らしに欠かせない、お米からできるこうじ。三食すべてをからだの良いもので埋め尽くそうでせず、まずはおやつや飲み物から、自分に合った入口と方法で、こうじを取り入れることが大事なのかもしれません。
このお店のこと
rice shop 糀や
- 住所:宮崎県小林市野尻町三ヶ野山1293-11
- 電話番号:0984-44-3210
- 営業時間:10:00~23:00
- 定休日:無休
- 公式サイトはこちら
-
「大人すはだ」編集部
大人がすはだで暮らす時間を提案するウェブマガジン「大人すはだ」の編集部です。
「大人すはだ」編集部の記事一覧
-
-
食べる
「あきゅらいず文化祭」で美養食(びようしょく)を堪能!すはだを美しくする薬膳料理とは
2016.11.28
-
-
ひと
【中島デコ×小倉ヒラク対談#3】「気があう」のは「菌が合う」から?
2016.11.24
-
-
ひと
【中島デコ×小倉ヒラク対談 #2】シンプルで自分らしい暮らしのヒントは、手前味噌造りにあり!
2016.11.21
-
-
食べる
【中島デコ×小倉ヒラク対談#1】美肌の秘訣は、毎朝の味噌汁と「好き」を極めること
2016.11.18
-
-
食べる
手作りで簡単にできる!肌荒れや生理不順に効く豆乳おかわりおやつ5選
2016.11.14