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パンを焼いて始まる恋!?新たな人生の糧と絆を手に入れよう。漫画『Bread&Butter』
2015.09. 3
Bread&Butter, パン, 漫画
思い描いていた希望があった。生きる道に迷いはなかった。なのに、いつかどこかで迷い、自信は崩れ、そして手放した。
長く生きる人生の中では、ときに苦い瞬間があります。
今回、ご紹介する漫画『Bread&Butter』(芦原妃名子作 集英社)は、思い描いていた人生を手放したとき、新たに出逢った男女の物語です。

主人公の柚季(ゆずき)は、小学校の教師をやめて結婚をしようと婚活を開始。しかし、なかなかうまくいかず、行き詰っているとき、文房具屋の片隅でパンを焼いている青年・洋一と出会います。
洋一の焼くパンのおいしさに元気をもらった柚季は、「この人とおいしいご飯が食べたい」と、思わずプロポーズ。すると、洋一はまさかの承諾。
というわけで、婚約先行で付き合いはじめた二人は、やがて、一緒にパンを焼き始めるのです。
12年間、小学校の教師を続けてきた柚季。しかし、ある事件が起き、彼女はそれにどう立ち向かえばよいかわからなくなっていました。そして、ある現実を突きつけられます。信念をもって行動できない自分は、なんとなく教師をしてきたに過ぎなかったのだと。
それを知ったとき、柚季の自信はもろくも崩れ去り、彼女は教壇を去ることしかできませんでした。
一方の洋一は、かつては売れっ子漫画家。しかし、彼もまた、あるとき自分の自信が根拠のないものだったことに気づき、そのときから、漫画を描けなくなってしまいます。
自信を失い、仕事を手放し、そして、ともにパンを焼くという新たな道に行きついた柚季と洋一。一緒にパンを作る中で、二人は少しずつ心を通わせ、またそれぞれが自分を見直し、そして、気がつくのです。
自分にできることを続けていけば、いずれコツをつかみ、向き合い方がわかってくる。そして、積み重ねた経験は必ず糧になる。
それは、パンも人との触れ合いも同じこと。

かつての教え子に、なぜ、パンを焼くのかと問われたとき、柚季は、「パンが焼けるのを待っている時間が好きだ」と答えます。
「沢山試して考えて、最善を尽くしたら、ただ、“育つ”のを信じて待つしかない」「今の自分にできることをやり切って、あとはどんな風に育つのか、ただ、見守るの。それが今の私の精一杯。淡々とそれを繰り返す」(コミックス第3巻より)
人生には、思い通りにいかないときがあります。間違うことも、見失うこともある。ときには、手放すしかないときもあります。
けれど、柚季と洋一のように、手放したときに新しい世界が広がり、そして、自分にできることを続けながら、答えが見えることもきっとあるに違いありません。
この作品のこと
作品名「Bread&Butter」
- 作者:芦原妃名子
- 全何巻:3巻まで(続巻)(集英社 マーガレットコミックス)
- 出版社:集英社
- 連載年数:2013年~連載中
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田下愛
フリーランスライター 雑誌、書籍、Webメディアで、政治からサブカルチャーまで幅広いジャンルの仕事をこなして奮闘中。著書に「選挙はエンターテイメントだ!」(HK INTERNATIONAL VISION)がある。オーガニックコスメ・マニアで、石鹸で落ちるメイクとシンプルなスキンケアを実践中。趣味は、オーケストラでヴァイオリンを弾くこと。
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