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昔ながらの伝統を守りたい!からむし織体験生(織姫・彦星制度)とは
2015.09.15
福島県昭和村は、繊維の原料となる「からむし」を生産している数少ない村のひとつです。歴史あるこの村で「からむし」を守るために生まれた、ある制度があります。それが、福島県昭和村のからむし織体験生制度、通称「織姫・彦星制度」(以下、織姫制度)です。
今年で22年目を迎える「織姫制度」が作られた背景には、貴重な文化遺産でありながら、村の過疎化が進み、「からむし」の継承が難しくなっていた現状がありました。
そこで、村の人々だけで解決法を探るのではなく、村の外から訪れる人々や、定住人口を同時に増やして「からむし織」の織り手を養成するため、この制度が平成6年からスタートしました。

当初は、3年間限定の募集としてスタートした織姫制度でしたが、今では昭和村の人たちは「織姫」をとても大切に見守り、手をかけて育てる存在となっています。
けれど、そうなるまでには、一筋縄ではいかない、村の人々の想いもあったそうです。
門外不出のからむしの技術
織姫制度が始まった当初、村の人々にとって織姫は、今ほどすんなりと受け入れられる存在ではありませんでした。なぜなら、もともと昭和村に根付いていた、からむし栽培の技術や方法が、各家庭で継承される秘技であり、よその人に教えたり見せたりするものではなかったからです。
村の人みんながライバルとなり、良いからむしを競って作ることが主流でした。

けれど、過疎化や暮らしの様式が変化するなかで、技術の継承が厳しくなってきたことから、自分たちの土地に根付く文化として、村をあげて「織姫制度」という活動に取り組みを始めました。
体験性としての期間は、10ヶ月。栽培時期に合わせて5月にスタートし、共同生活をしながら、一連の工程を体験し、卒業制作として、自分たちが育てて刈り取ったからむしで、名古屋帯を織り上げる。そこまでが体験内容です。

けれど、本格的にからむしの技術を学ぼうと思うと、1年のみでは表面的なことしか知ることはできません。体験期間を終えて、本腰を入れて技術を学ぶために、いざ村のベテランの職人の自宅を訪ねても、初めの頃は、作業の姿を簡単には見せてくれないことも。
村の人たちが技術を大切に継承している姿を見て、体験生たちは、本格的に「学びたい」という意志が芽生えるのです。
今年の織姫たちの作業の様子
8月初旬は、体験生たちは刈り取りや苧引き、陰干しを終えたからむしを、品質ごとに振り分け、出荷できる形に束ねる「結束」の作業を行います。
出荷用のからむしを、村の方たちは手際よく束ねていきます。

体験生たちは、そうした姿から学びながら、自分たちで育てたからむしを、見よう見まねで卒業制作用に束ねます。
作業がひと段落すると、全員で大きな円になって休憩タイム。5月に村に訪れたばかりの織姫さんは、まだ緊張しながらも、こうして村の人たちの生活のリズムを身につけ、からむし以外の暮らしの知恵も同時に教わります。

職人の暮らしとともにある、からむしに触れ、目の前のモノだけでなく、その作り手の方々と過ごす日々は、伝統と歴史の息遣いを生で感じることのできる貴重な機会です。
応募資格は、健康で、からむし織の文化や村の暮らしに興味があるかどうか。特別な資格も試験もありません。約1年かけて、未知なる地域に根ざした暮らしをすることで、自分の今までの生活や着るものを見直す大きな転機になるかもしれません。
訪れた場所
昭和村体育館「昭和村からむし生産技術保存協会」主催の「結束」作業
参照
参照資料
『からむしの学校 −からむしを知る・考える・伝える−』発行:福島県大沼郡昭和村 編集・企画:昭和村総務課企画係
★★★
★すこやかさは内側からも
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中條美咲
昭和64年1月3日 長野県生まれ。 2014年 暮らしの中で出会ったものや人、そこから感じたことを文章で伝えていきたいと思い 「紡ぎ、継ぐ」というブログを始める。” 見えないものをみつめてみよう。” ということをテーマに、書くことを通じて多くの出会いに触れながら、感じる力を育てていきたい。 現在は「灯台もと暮らし」と「PARISmag」にてライターとして活動中。
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