大人すはだ大人がすはだで暮らす時間

TOP » お役立ち » 訪れるとキレイになれる?昭和村で「からむし織り」を営み、すはだで暮らす女性のヒミツ

お役立ちお役立ちひと

訪れるとキレイになれる?昭和村で「からむし織り」を営み、すはだで暮らす女性のヒミツ

2015.09.17

からむし, 昭和村, 暮らし, 福島県, 織姫, 織姫彦星制度

古来より日本人に馴染みのある繊維「からむし」を継承している、昭和村。奥会津の風土に育まれた、歴史あるからむし生産は、時代に即して300年以上受け継がれてきました。
 
fune8.jpg
 
高齢化で存続が危ぶまれていた昭和村。現状を打開すべく、からむし栽培を体験できる「織姫・彦星制度」という、村の外から人を受け入れる新体制が生まれました。
今年に入り、その制度で体験生として昭和村へ訪れ、移住して暮らし始めた女性二人組によるユニット「渡し舟」が登場。これからのからむしを全国へ向けて伝えていくべく、活動しています。
 
fune1.jpg
舟木由貴子さん(左)渡辺悦子さん(右)
 
「渡し舟」の舟木由貴子さんと渡辺悦子さんは、織姫制度で昭和村に訪れてから知り合いました。舟木さんは現在、昭和村「からむし生産技術保存協会」の事務局で、村の枠組みに囚われず、からむしの技術を継承していくための活動をしています。また、渡辺さんは村の中でも特に美しいからむしを引く生産者の一人で、自宅の一角を「渡し舟」のショップとして開業しています。
 
お二人に、昭和村での暮らしや、からむし織りの魅力、女性としてすはだでより良く生きていくための実感・ヒントなどを伺ってみました。

都会暮らしから田舎暮らしへ

舟木さんは、豊かな自然を、渡辺さんは恋人のように愛せる仕事を、それぞれ求めて昭和村にたどり着きました。からむし織りの修行をしに訪れる女性は「織姫」と呼ばれ、1年目は村から住居のみ提供されます。2年目からは研修生という肩書きに変わり、月ごとに数万円の助成金が村からおります。
 
そのお金をやりくりしながら暮らす日々は、さぞ大変で辛いのだろうかと思いきや、昭和村での日々は、心身のデトックスになったといいます。

fune2.jpg
 
「都会で働いていた時は、生活の多くが私の身の丈に合っていないと感じて、ストレスばかりが溜まってしまっていました。休みも全然とれなくて、肌も調子が悪くてニキビもすごかったですね」(舟木)
 
昭和村でからむし織りの修行をしながら暮らすうち、ニキビは自然と消えていき、顔つきも変わっていきました
 
fune3.jpg
水につけた苧麻を、これから苧引きするところ
 
その理由のひとつに、昭和村での食生活が挙げられます。旬の野菜を中心に用いられた食事を続けることで、自然と健やかなからだになり、メイクをする必要が無くなっていきました。都会で暮らしていた経験もある二人だからこそ、土地が育む食べもののありがたみを感じ、だんだんと昭和村の暮らしが馴染むようになっていきました。
 
「はじめは、文化を引き継ごうなんて考えていなくて、自分のことばかりで頭がいっぱいでした。でも、村でからむしに携わるじいちゃんやばあちゃんを見ていると、自然に『この村のためにがんばりたい』と思うようになりました」(渡辺)
 
fune5.jpg
苧引きの作業。糸づくりに必要な繊維だけを剥ぎ取る
 
その後、二人は昭和村で結婚をし、徐々に村の人たちにも受け入れてもらえるようになりました。地域に根を張り、暮らし始めてから15年経った頃、舟木さんと渡辺さんは「渡し舟」というユニットを立ち上げます。

からむしを新しい形で伝えるユニット「渡し舟」

「渡し舟」(わたしふね)とは、昭和村の人々が織った「からむしの布」を現代の生活に落とし込んだ商品作りをしたり、からむしの歴史や作られる過程について講演を行ったりするユニットの名前です。2015年6月には、完全予約制のからむし織りのショップをオープンしました。
 
渡辺さんの「渡」と舟木さんの「舟」の文字を引用して名付け、からむしのいろはを伝える活動をおこなっています。
 
fune6.jpg
「渡し舟」の看板として使用しているのは、使い古されて年季の入った苧引き盤
 
「渡し舟」の活動の根底には、昭和村に受け継がれてきたからむし生産技術のすばらしさが、きちんと使い手に伝わっていないことへの危惧があります。長年織りをおこなってきた年配の村人たちは、布以外の形で売る方法をしてきませんでした。
 
そこで、より広い層の人々に、からむしがどれほど風土と人の手によって支えられている織物なのかを分かりやすく伝え、かつ村の小さな産業としてきちんと回っていくことを目指しています。
 
fune7.jpg
 
「本当のからむしの価値を知ってもらうには、土いじりから始まって、育てて刈り取って乾かして、糸を作って紡いで布にするというプロセスまで伝えないといけない。おばあちゃんたちが紡いだ糸を使って作ったものが見合う価格で売れることで、また翌年に頑張って機織りをして、布ができるというサイクルを作りたかったんです」(舟木)
 
ありあまる大量生産された布とは違い、からむしの布は、昭和村の土と空気と風と水によって作られているということを知ってほしい。そんな想いから、「渡し舟」の活動をしているといいます。
 
fune13.jpg
 
そのため、「渡し舟」の活動のひとつで、大切にしているのはワークショップ。一緒にからむしの布を使って小物を作ることで、糸一本ができるまでのプロセスや、布の肌触りをリアルに感じてもらえるためです。
 
fune12.jpg
室内で影干しされるからむし。普段は日差しも極力入れないように干されている
 
「作り手の方々から話を聞いて、これをどう使おうか考えるだけでも、わくわくするし、心が潤うと思います。だから、まずは昭和村に来てほしいなって思いますね。からむし自体が、土地に根付いているものですから、その雰囲気ぜんぶを感じてみてほしいです」(渡辺)

夢中になるものを見つけると「すはだ」に近づいていく

fune14.jpg
 
最後に「渡し舟」のお二人に「すはだで暮らす」こととはどういうことか伺いました。
 
「夢中になれることを見つけることで、自分の手で人生のいろいろなことを選ぶことができます。そうすると、自分の核ができるし、ほかの誰でもない『私』が見えてくると思います。その『私』で暮らすことが、すはだで暮らすということなのかもしれないですね」(渡辺)
 
「私にとって結婚や出産が、とても大きな転機でした。こんなに人生を豊かにしてくれるものはないと思います。思いもよらないものが、心を満たしてくれることがありますから、それに鈍感になって逃さないようにアンテナを張っておくことで、心地よい暮らしができるのかな」(舟木)
 
fune11.jpg
 
まだまだ活動を始めたばかりの「渡し舟」。新しい形でからむしが伝わり、これからの日本の織物として残っていくためには、欠かせない存在となりそうです。
 
使うだけ、触れるだけで、どこか愛おしい気持ちになれる。人々の体温が伝わる天然織物が「からむし」なのかもしれません。

お話をうかがった人

渡辺 悦子さん
元織姫。福島県出身。自分の実感が持てる仕事がしたいという思いから、都会で5年間ほど勤めたのち、織姫制度を利用して昭和村へ移り住む。現在2歳になる娘さんを持つお母さん。からむしについて村内外へ発信するため、「渡し舟」というユニット名で、舟木さんととともに活動。
 
舟木 由貴子さん
元織姫。茨城県出身。身の丈にあった暮らしをしたいと、28歳のときに、織姫制度を利用して昭和村へ。苧麻とともに昭和村で暮らしていく中で、腰を据えないと何も始まらないと思い、移住し、結婚。現在は3児の母。「昭和村からむし生産技術保存協会」で働く傍ら、「渡し舟」としての活動に力を入れる。
 
 
中條美咲

中條美咲

昭和64年1月3日 長野県生まれ。 2014年 暮らしの中で出会ったものや人、そこから感じたことを文章で伝えていきたいと思い 「紡ぎ、継ぐ」というブログを始める。” 見えないものをみつめてみよう。” ということをテーマに、書くことを通じて多くの出会いに触れながら、感じる力を育てていきたい。 現在は「灯台もと暮らし」と「PARISmag」にてライターとして活動中。

中條美咲の記事一覧

  • 女性の象徴でもある「コスモス」|季節に咲く野の花を愛でる(11月)

    もの

    女性の象徴でもある「コスモス」|季節に咲く野の花を愛でる(11月)

    2015.11.13

  • 秋の風物詩「ススキ」|季節に咲く野の花を愛でる(11月)

    もの

    秋の風物詩「ススキ」|季節に咲く野の花を愛でる(11月)

    2015.11.10

  • すっと伸びる姿に気品あふれるシュウメイギク|季節に咲く野の花を愛でる(10月)

    もの

    すっと伸びる姿に気品あふれるシュウメイギク|季節に咲く野の花を愛でる(10月)

    2015.10.18

  • 訪れるとキレイになれる?昭和村で「からむし織り」を営み、すはだで暮らす女性のヒミツ

    お役立ち

    訪れるとキレイになれる?昭和村で「からむし織り」を営み、すはだで暮らす女性のヒミツ

    2015.09.17

  • シルクを超える繊維? 福島県昭和村のからむし作りの流れ

    お役立ち

    シルクを超える繊維? 福島県昭和村のからむし作りの流れ

    2015.09.16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

おすすめ記事

  • 【連載】

    コラム

    【連載】"すこやかに生きる"ための真理とは|すこやかに生きるということ⑯

    2017.01.21

  • 【連載】愛されていないと不安な「一人がこわい系」のカン違い|○○系からの成仏(5)

    コラム

    【連載】愛されていないと不安な「一人がこわい系」のカン違い|○○系からの成仏(5)

    2017.01.14

  • 【連載】はじめまして、ヒビノケイコです|酸いも甘いも家族の内①

    コラム

    【連載】はじめまして、ヒビノケイコです|酸いも甘いも家族の内①

    2015.11.28

  • 【連載】からだを慈しむ、薬草の旅 vol.5|アイヌが愛用するナギナタコウジュ

    コラム

    【連載】からだを慈しむ、薬草の旅 vol.5|アイヌが愛用するナギナタコウジュ

    2015.10. 3

編集部ピックアップ

  • ぬか漬け生活2週間目、5日間の旅行に出ても大丈夫でした

    ピックアップ記事

    ぬか漬け生活2週間目、5日間の旅行に出ても大丈夫でした

  • お手軽、ぬか漬け生活はじめました!!

    食べる

    お手軽、ぬか漬け生活はじめました!!

  • 【連載】目をそらしていた自分と向き合う第一歩|○○系からの成仏(最終回)

    コラム

    【連載】目をそらしていた自分と向き合う第一歩|○○系からの成仏(最終回)

「大人すはだ」限定のコラム連載中

  • からだを慈しむ、薬草の旅
  • 四季のたしなみ、暮らしの知恵
  • 発酵兄妹・妹の 発酵とすはだのおいしい関係
  • すこやかに生きること
  • おかわりおやつ
  • 酸いも甘いも家族の内
  • 中島デコのうみ•そら•みどりを召し上がれ!
  • 小手鞠るいのNYの森からきれいに私生活
  • あきゅらいず美養品
pagetop