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福島県の昭和村に脈々と続く、自然布からむし(苧麻)との出会い

2015.09.14

からむし, 伝統工芸, 昭和村, 福島県, 衣類

自然が豊かな日本では、身近な植物を使った木綿や葛布、麻布や天蚕などの衣服の文化が、1000年以上の時間をかけて培われてきました。
 
しかし、そうした自然由来の素材をつかった伝統織物の多くは、大量生産・大量消費の流れのなかで徐々に衰退し、今では古き良き文化のひとつとして「高級な素材」という位置づけに変化してしまいました。
 
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しかし、すはだにとって、より自然で心地よいものを考えたときに、自分のからだに何をまとい、どんな食べ物を食べるかは切っても切れないテーマです。
 
自然に抗わず、本当に上質なものを求める人々が、少しずつ増え始めた昨今、こうした衣類の日本文化は、大きく見直され、注目を浴び始めています。
 
なかでも、福島県昭和村に伝わる自然素材「からむし(苧麻)」は、今でも続く村の暮らしに根付く伝統産業。土地の風土や歴史、人の手から手へ伝わる技術と、それらを守るための方法は一体どんなものなのでしょうか。
 
まずは、「からむし」という素材そのものについて、ご紹介します。

上位者の正装に使われていた「からむし」

江戸時代の頃から、大芦村を拠点として、昭和村の「からむし栽培」は行われるようになりました(諸説有り)。からむしは、イラクサ科のカラムシ(苧麻)という植物から採れる繊維で、成長すると2mほどの高さまで成長します。
 
表記も様々で、からむしのことを、まお、チョマなどと表現することもあります。
 
からむし
 
からむしは、各民家でていねいに育てられ、最上質の繊維に仕立てられたあとは呉服織の一大産地である新潟県越後へと運ばれていきました。
 
かつては天皇を中心とする、皇族・貴族などの身分の高い人たちが、夏の衣装として細く美しく績まれた苧麻布をまとっていたそうです。

会津の自然が育んだ、昭和の風土

そんなからむしの名産地・昭和村とは、福島県奥会津地方に、昭和2年に野尻村と大芦村が合併してできた山里です。そこでは、日本の各地に存在していた原風景と、農耕の暮らしが現在でも見られます。

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会津の磐梯山(ばんだいさん)から折り重なる山々に囲まれた村は、山より湧き出た豊富な水で潤っています。
 
こうした山々から続く、たくさんの支流が川となり、その水源を中心に村の暮らしが営まれてきました。

「緑のダム」と呼ばれるブナ林

会津民俗研究の第一人者である佐々木長生(ささき たけお)さんによると、豊富な水量が保たれている理由は、会津の土地に根付くブナ林の役割が大きいといいます。
 
ブナ林
 
会津は日本海岸式気候で、冬は豪雪地です。また、昭和村は標高も高く高原地帯なので夏はカラッと涼しいくもあります。そのため、この一帯は、冬になると2〜3mも雪解けで大量の水がたくわえられます。
 
この水は、スポンジ状になっているブナの林床によって、徐々に麓へと濾過(ろか)されながら、数十年かけて、地域の村町をうるおす湧き水になるのです。
 
雪国で織物が盛んになるのには、雪による湿気の多さが大切です。また、太陽の紫外線と、溶けた雪水によって、布をさらに白く晒すことができるのだそうです。

昭和村の土に根付く「結い」の文化

また、昭和村には雪国独特の文化もあります。
 
たとえば、からむしとともに昭和村に暮らす人たちは、「結(ゆい)」の関係をとても大切にしています。人出が足りなかったり、困ったことがあったりすると、互いに助け合うことを「結」と呼ぶのです。
 
昭和村は、冬になると雪深く、人々のつながり無しには暮らしていくことが困難なため、「結」という名のもと、助け合いの文化が根付いていきました。

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佐々木さんは、会津に伝わる話のうち「会津の三泣き」があるといいます。会津に来て、まずはじめに「自然の厳しさ」に泣き、「よそ者に対する疎外感」に泣き、最終的には住む人々の人情の厚さに「別れるのが辛くて嫌だ」と泣くのだそうです。
 
そのくらい、昭和村での人々の結びつきは強いもの。からむしがここまで脈々と続いてきた理由は、風土のみならず、こうした人々の暮らしぶりにもあるのです。
 
すはだにとって、単に肌触りが良いだけでなく、自然と調和し、無理せず心地よく暮らしていくとは、どういう暮らしなのか。そんな「生きる」ための根源を考えるきっかけとして、昭和村のからむしを感じてみてください。

※今回、総合地球環境学研究所の共同研究のフィールドワークに同行させていただいた中で、佐々木さんのお話を伺わせて頂きました。
監修:佐々木長生(福島民俗学会会長。元福島県立博物館専門学芸員として、福島県立博物館の立ち上げから携わられ、会津民俗研究の第一人者と呼ばれる)
 
★★★
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中條美咲

中條美咲

昭和64年1月3日 長野県生まれ。 2014年 暮らしの中で出会ったものや人、そこから感じたことを文章で伝えていきたいと思い 「紡ぎ、継ぐ」というブログを始める。” 見えないものをみつめてみよう。” ということをテーマに、書くことを通じて多くの出会いに触れながら、感じる力を育てていきたい。 現在は「灯台もと暮らし」と「PARISmag」にてライターとして活動中。

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