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日本の台所を支えるこうじが、食卓に届くまで

2015.07.13

みそ, みそ造り, 味噌蔵, 発酵, 糀屋三郎右衛門

ここ数年で、こうじを使ったさまざまな食品を、見かけるようになりました。けれど「そもそも、こうじって……?」と聞かれても、きちんと答えられない人も多いでしょう。
 
今回は、こうじに関するいろはを、東京の老舗「糀屋三郎右衛門」の味噌蔵からお伝えしたいと思います。 

こうじは「カビ」を表す 

こうじは、日本の清酒醸造業が、蒸した米に麹菌をふりかけてコウジカビのみを純粋培養したのが始まり。奈良時代には、すでに日本文化に根付いていたと言われています。
 
米こうじ
 
また「こうじ」を表す漢字は「麹」と「糀」と2種類あります。どちらも「米や麦や豆を蒸して、麹菌を繁殖させたもの」という意味を持つ漢字です。

「麹」は中国から伝わってきた「カビ」を表す漢字、「糀」は麹菌の胞子が、米にふわふわと花が咲いたように見えることから作られた、日本オリジナルの国字です。
 
どちらの字を使っても正しいのですが、「米」か「麦」かの違いから、米こうじを扱う味噌蔵の方々は、主に「糀」の字をよく使っています。

こうじがある暮らしが生んだ言葉

こうじが日本に根付いていたということは、食べ物だけでなく言葉からもよく分かります。
 
たとえば、手前味噌という言葉。かつて味噌といえば、各家庭で作るのが普通で、「自分の家で作った味噌が一番美味しい」と自慢し合っていたことが由来しています。自分のことや身内の功績を、謙遜しながらも自慢したい時に「手前味噌で恐縮ですが」と言って、前置きとして使う言葉です。 
 
このように、古くから一般家庭でもこうじは、私たちの生活に溶け込んでいたんですね。
 
みそ
 
日本では、一般的に2月が味噌造りに最適な時期と言われています。これは、冬の時期に仕込むのが、低温熟成できてちょうど良いと考えられているから。けれど実際は、昔から農家では農閑期、春の稲を巻く前に作っていたそうです。

お味噌が食卓に届くまで 

さて、こうじを使った、身近な食材のひとつに、お味噌があります。東京都練馬区中村橋にある、都内唯一の味噌蔵を持つ「糀屋三郎右衛門」を訪ね、7代目の辻田雅寛さんにお話を伺いながら、お味噌ができる過程を、見学させていただきました。 
 
P6101379.JPG
 
木造の蔵に入ると、良い香りが立ち上ります。90キロの大豆が入る、大きな圧力鍋から蒸しあがった大豆を出し、扇風機も使いながら3人がかりで広げて、冷まします。
 
みそ造り
 
蒸しあがった大豆はつやつや。圧力鍋から一粒残らず潰れることなく、ほろほろ出てきます。味見させていただいたところ、栗のようなホクホクとした甘さで、旨味たっぷり! 
 
糀屋三郎右衛門
 
味噌作りで使われる「手作りこうじ」は、前日から水に浸して蒸しておいたお米と麹種を混ぜて木枠に入れ、大谷石で造られた室(むろ)と呼ばれる蔵で、温度と湿度を管理され、三日三晩寝かせて出来上がります。
 
室
 
小分けにした蒸しあがった大豆と、「手作りこうじ」に塩を混ぜた「塩きりこうじ」と「水」を潰しながらよく混ぜ、大きな木樽に担いで運び入れていきます。
 
みそ造り
 
最後に味噌を踏んで空気を抜き、落し蓋をして重石を乗せ熟成させていきます。
 
みそ造り
 
この後、味噌の表層も熟成できるようひっくり返し、静かに発酵を待って、ようやく完成。 味噌によっては、完成する時期が違うため、それまで大切に管理されます。
 
このように、味噌はこうじなどの素材から、時間や温度、湿度など身の回りの環境をていねいに整えることで出来上がります
 
できたてのお味噌をいただきましたが、一口ぺろっとなめただけで、とても深くて優しい味わいが口いっぱいに広がります。大切に濾(こ)した出汁と共に一さじずつ溶いて、お味噌汁にしたくなる、丹精こめて作られたお味噌です。
 
買っても作っても、ほかとは違う贅沢を味わわせてくれる、お味噌の時間。 なにげない食卓の、一杯のお味噌汁には、日本の食文化が、ぎゅっと詰まっているのです。
 
 
Amika

Amika

シンガーソングライター、CM音楽の歌作詞作曲、ライター、パン・料理研究家。出産を機に子供と同じ卵乳にアレルギーがあるとわかり、日常から卵乳製品を使わない料理やマクロビオティックを実践。中医学(薬膳)も学ぶほぼベジタリアン。作詞作曲のかたわら、学び続けてきた自然酵母のパンと焼き菓子、妊娠出産授乳期や養生食、狭心症や糖尿病のための食事、菜食と肉食ごはんの両立、アレルギー対応食の講座を担当。

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