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【連載】食べられるカビ「こうじ」ってなに?|発酵とすはだのおいしい関係(4)
2015.09.19
先日、お客さまからこんな電話がありました。
『こうじにカビが生えています。交換してください』。
お客さまは、こうじの正体を知らずに、米の周りにモコモコと生えている菌糸を見て驚き、五味醤油まで電話を下さったのでした。しかし、こうじが何者なのか説明すると、なあんだ、と安心していただけました。
このエピソードを聞いて『カビなのに交換しないの!? ちょっと五味さんどういうつもり?!』と思う方も、思わず『ぷぷぷ』と笑ってしまう方もいると思います。
どうして私がカビの生えたこうじを交換しなかったのか……今回はその理由と、こうじの正体をご紹介します。
こうじは食べられるカビ
こうじは、ずばり「食べられるカビ」です。多くの方は、カビと聞くと食べものを腐らせる、悪者のイメージがあると思います。人間に悪いことをするカビや細菌を「腐敗菌」と言います。一方で、こうじのように食べても大丈夫で、人間に良いことをしてくれるカビや細菌を「発酵菌」と言います。
カビと聞くとすぐ、良くないものをイメージしてしまいますが、目に見えない菌には、悪者も善者もどちらもいるのです。
蒸した穀物(米、麦、豆)に、こうじ菌を繁殖させたものがこうじ。米にモコモコと菌糸が生えているのがわかります。
どうして私が、カビの生えたこうじを交換しなかったかと言うと、そもそもこうじはカビだったから、という訳です。
こうじは縁の下の力持ち
では、そんなこうじはいったいどこで、どんなはたらきをしているのでしょうか。
しょうゆ、みそ、みりん、酢、日本酒、焼酎……これらの日本独自の発酵食品は、すべてこうじからできています。こうじが無くては、日本の食卓は語れないと言ってもいいほど、縁の下の力持ちとして日本の食文化を支えているのです。
どうして、こうじを使用した発酵食品が発達したかというと、こうじのもとであるこうじ菌は日本でしか育たないから。こうじ菌は、日本の湿気のある気候を好みます。なんと! こうじ菌は「国菌」と言われているほど、世界的に見たら貴重な存在なのです。
こうじ菌(ニホンコウジカビ)photo by 深澤久美子
こうじの素晴らしさ、伝わりましたでしょうか? こうじの説明は、目に見えない世界のことだからか、なかなか難しく、いつも頭を抱えてしまいます。
じつは、こうじのことを小さいお子さまにも楽しく分かりやすく伝えたいと3分でこうじのことがわかるアニメーションを作りました。今日の話のまとめにご覧ください。
- You tube:「こうじのうた」
発酵とは、一言でいうと「目に見えない菌の営み」です。私が発酵のとりこになったのは、この営みにロマンを感じたから。
目に見えない小さな小さな菌たちが、食べものを美味しくしたり、発酵食品特有の豊かな香りや味を作ってくれる。いつも何気無く口にしている調味料もお酒も、発酵菌からの贈り物。
そう思って味わうと、いつもは感じない深みが醸し出されてきませんか?
自分の食をちょっと見つめ直すだけで、いつもと同じ食卓が豊かに変わります。次回は、こうじが何か分かったところで、こうじがいかにスゴいかということを、お話しようと思います。
★★★
★うつくしいすはだ、手に入れたい?
★発酵のちからでキレイを養おう
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五味洋子
山梨県甲府市出身。東京農業大学醸造科学科にて発酵学を学ぶ。卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年、味噌屋への帰郷を決意。みそ屋の六代目を務める実兄と発酵兄妹として手前みそ文化や、発酵文化を伝えるため日々奮闘中。