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ひと場所食べる
銀座のミツバチはジェントル?人・もの・ことをつなげる「銀座ミツバチプロジェクト」
2015.10.12
高級ブランド店やデパート、高層ビルが建ち並ぶ銀座。歴史を遡ると、そのルーツは江戸城の城下町として栄え、銀を鋳造する職人や木材を加工する木挽き職人、能楽師、絵師などが住む街だったといいます。
そんな歴史と近代的な街の顔を合わせ持つ銀座で、ユニークな活動をする団体があります。
それは、2006年に日本で初めて都市養蜂を実現させた「銀座ミツバチプロジェクト」。銀座の街でミツバチを飼育し、養蜂場から2km圏内の花から採れた「銀座はちみつ」を銀座にあるお店で提供する、そんな取り組みに信念を燃やす、銀座を心から愛する人たちの集まりです。
今回は、「皆さんに、銀座をもっと身近に感じてほしい」と話す銀座ミツバチプロジェクト広報の田中章仁さんに、プロジェクトへの強い想いを伺いました。
「銀座ミツバチプロジェクト」とは?

銀座ミツバチプロジェクトとは、「銀ぱち」の愛称で呼ばれる、銀座のビルの屋上で行う養蜂を成功させたNPO法人。これまで銀座はちみつを販売したり、銀座の街巡りツアーを企画したりしながら、都市と自然と人の共生を実現させてきました。
銀座でミツバチの飼育と聞けば、刺されてしまうのではないかと不安に思う方は多いでしょう。しかし、これまでそんなたくさんの不安と向き合ってきた田中さんは言います。
「ミツバチは、人を刺したら自分も死んでしまう生き物です。どんな生き物も、死にたくないのは人間と一緒。ですから、ミツバチはむやみに人を襲いません。ミツバチは大事に育てれば、なついてくれますから私たちは収穫作業を素手で行います。視察に来た外国の方には、銀座のミツバチはジェントルだと言われますよ(笑)」
また、銀ぱちはビルの上で養蜂をすることだけを目的とするのではなく、街の緑化にも力を入れてきました。現在、銀座のビルの屋上に「銀座ビーガーデン」を13ヵ所、合計1,000平米以上の広さに設け、新潟県の茶豆、福島県の菜の花などを育成。積極的に被災地との交流し、地域の方たちとビーガーデンを育てることで、人のつながりを深めています。

ビルの屋上にある銀座ビーガーデンの1つ
ミツバチが銀座にたくさん生息する春から夏にかけては、親子を対象にしたワークショップを開いたり、小学校などにガラスケースに入れた巣を持って講義しに行く「出前授業」を行ったりすることも。都会ではなかなか知ることない「食べ物のルーツ」を知るその時間が、未来の生物博士を誕生させているかもしれませんね。
都会ならではの“百花の味”を楽しめる「銀座はちみつ」
「都会には人が愛でるための花がたくさん咲きます。銀座の街は通りごとに違う花が植えられ、週替わりで種類の違う蜜が採れるのです。一面のレンゲ畑でたくさん採取するような養蜂は都会ではできませんが、コンスタントに蜜を採れる花がある銀座の環境は、ミツバチにとっても非常にいい環境なんですよ」
そう田中さんにお聞きし、改めて街を歩いてみると、本当に銀座の街にはさまざまな花が咲いていることがよくわかります。
銀座はちみつは、レンゲやアカシアといった一種類の花から採った蜜ではなく、いろいろな花の蜜が混ざった百花蜜(ひゃっかみつ)。そのため、季節によって色や香りが違い、その季節の花の味が楽しめます。
銀座はちみつは、レンゲやアカシアといった一種類の花から採った蜜ではなく、いろいろな花の蜜が混ざった百花蜜(ひゃっかみつ)。そのため、季節によって色や香りが違い、その季節の花の味が楽しめます。

いくつか試食させていただいた内、私が一番感動したのは桜の時期に採取できるはちみつ。白に近い透き通った色と桜の香り、華やかささえ感じる奥深い味に、一瞬で心を奪われてしまいました。春になったらぜひ、皆さんにもご賞味いただきたい一品です。
「銀座はちみつ」が食べられるのは銀座の中でだけ
毎年、約1トンのはちみつを採取しているという銀座ミツバチプロジェクト。「銀座で採れたはちみつは、銀座に来なければ食せない」をモットーに、銀座1丁目~8丁目にあるお店とコラボレーションした商品をたくさん生み出してきました。

銀座はちみつを使ったスイーツの中で特に人気なのは、銀座文明堂の「銀座のはちみつカステラ」。その他、アンリ・シャルパンティエの「銀座はちみつパイ」やスワンベーカリー銀座店の「銀座みつばちラスク」など、はちみつのやさしい甘さと香りが生きるスイーツが、たくさんの女性の心をとりこにしています。

スイーツの他、おつけもの店の喜多福が販売する「銀座はちみつ梅」や「銀座はちみつ入り季節のピクルス」も非常に人気なのだとか。なお、「銀座はちみつ」そのものは、はちみつ専門店のラベイユにて販売されています。ぜひチェックしてみてください。
ミツバチから酵母を採った世界初のビール「銀座ブラウン」も

銀ぱちが生み出しているのはお菓子だけではありません。サッポロビールと協同開発した季節限定ビール「銀座ブラウン」、通称「銀ブラ」も、10月18日よりネット販売されます。約2年の開発期間を経て、3年前に発売した「銀ブラ」。はちみつから酵母を採るのではなく、ミツバチが自然界で蜜を集めてきた際、からだに付着する酵母に着目して生まれたビールのため、甘いわけではありません。
しかし、シナモンの香りとややクセのある深い味わいが、ビール通をうならせているといいます。今年は、その商品の他に、マイルドな口当たりのビールも開発されました。銀座で生まれた世界初の個性派ビールは、上質な時間を過ごしたい大人にぴったりの特別な一本になりそうですね。
国内外問わず養蜂の支援に尽力!広がり続けるミツバチプロジェクト
銀ぱちが発足してから約10年。今では、日本国内だけで100ヵ所以上のミツバチプロジェクトが養蜂グループとして広がっているそうです。地元の活性化を図るための養蜂からミツバチを飼育する愛好家など、飼育する人はさまざま。
ここ数年は、海外から銀ぱちの活動が注目されることも多くなっていると田中さん。特に、ロンドン、パリ、ニューヨーク、コペンハーゲン、モントリオールなど昔から都市養蜂を行ってきた大都市は、成功を収めている銀ぱちの活動に関心が高いといいます。
田中さんに今後の活動を伺ってみると、「次世代の街の在り方として、銀座が環境豊かな街であることを見せたい。世界から見ても、銀座は都市と自然が融合した最先端の街であることをアピールしていきたいです」と意気込みを語ってくれました。
また、はちみつはおいしいだけでなく、古くからその栄養価の高さや効能が語り継がれてきた食品でもあります。
「日本人にとって、はちみつはあまり身近な食材ではないかもしれません。しかし、イスラム教の聖典コーランには、はちみつを毎日食すよう書かれ、世界の三大美女・クレオパトラははちみつを美容品として使っていたといいます。はちみつには、保湿効果だけでなく強い殺菌作用があり、古くから傷薬や胃腸薬などとしても使われてきました。皆さんにもぜひ、はちみつ生活の中に取り入れていっていただきたいですね」
ミツバチがつなぐ銀ぱちの活動は、銀座のシンボルとしてますます人と自然の絆を広げていってくれることでしょう。
お話をうかがった人

銀座ミツバチプロジェクト 田中章仁さん
発足3年目からプロジェクトに関わり、銀ぱちの活動を広めてきた。銀座の街を愛し、もっと多くの人に銀座を身近に感じてほしいと、さまざまな企画に取り組んでいる。
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牧野絵美
音楽、芸術、書道と幼いころから“創る物”に没頭してきたインドア派。和の心をこよなく愛し、海外在住中も着物と書道具を肌身離さず持ち歩いた。 就職とともに仕事の楽しさに目覚めるも、サービス業の鬼になってやろうと上ばかり見て躓くこと数えきれず。縁あって小説を出版し、創ること、生み出すことに満たされる自分を再確認した。美しさと健康の原点は、生きたい自分を生きることと信じ、鋭意執筆中。
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