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コラム
【連載】からだを慈しむ、薬草の旅 vol.2|石垣島と月桃 ‐ ハルサ農園 ‐
2015.07.31
日本は本当に広い。
石垣島に到着し、その文化や気候の違いに驚きを隠せません。沖縄本島よりも、もはや台湾の方が近い位置にある石垣島。少子化が進む日本の中でも石垣島は、出生率2以上を誇る数少ない場所でもあります。

亜熱帯という気候が、もはや 本州とは全く違う植生をもたらし、見たこともないような草木や果実が、のびのびと、時には驚くほどの勢いで育っています。ビワや桑などのメジャーな薬草でも、「イヌビワ」「島桑」といった特有の種族になります。
今回は、石垣空港から車で30分。おもと山にあるハルサ農園を訪れる旅にご案内します。

ハルサ農園二代目の伊良皆高虎くんと、手伝っている友人の佐藤くん
ハルサ農園は、沖縄在住の伊良皆(いらみな)さんが「沖縄らしい薬草を育てよう」と、島中を巡り、薬草の本を見ながら研究して開いたハーブ園です。ウコンを中心に栽培し、様々な種類の植物のお茶を製造販売しています。島内のショップでも、ハルサ農園のお茶が並び、 人気商品になっています。
先代が病に臥したことがきっかけで、息子の高虎君が跡を継ぐ決心をしました。三反(約3000平方メートル)もの畑を耕し、春ウコンと秋ウコン、そして月桃(げっとう)などの沖縄らしい植物を、ハーブとして育てています。

採れたてのウコン
石垣島の気候は、非常にパワフル。5月の段階でもかなり強い日差しと暑さは、時には 野良仕事をするには過酷な状況にもなってしまいますが、日当りが関係して同じ植物でも本州と比べて沖縄の方が薬効成分が強い……というケースもあります。
過酷な環境ほど、植物も負けじと強い力を秘めて育っていくようです。
長命草に琉球松、島こしょう、モリンガ、マンジェリコン……石垣島は薬草の宝庫です。
沖縄では食べ物のことを「くすいむん(薬物)」と呼び、医食同源の意識が非常に強い。そして最近では薬草のことを「ぬちぐさ(命草)」と名付けて、ハーブフェスタなどの誘致を行い、市を挙げて新たな産業の一つとして取り組んでいます。

沖縄独特の薬草•イヌビワ
かつて、沖縄の小さな島には医師が常駐できませんでしたが、その代わり、稀に訪れた医者は時に医療の智慧を島民に授けたそうです。こうして、沖縄の中で民間医療が発達していきました。
そんな環境で育まれた、生きる力の強さと、穏やかな人柄。大きな空と海にゆったりと抱かれるような感覚で、この島を愛おしいと思う気持ちが日に日に芽生えてきます。
ちょうど訪れた日は「ムーチー(餅)の日」で、月桃に包まれた良い香りのお餅を食べました。

月桃の葉
次回は、郷土菓子にもよく使われる、香り高い“月桃”のお話をご紹介したいと思います。
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新田理恵
食卓研究家。管理栄養士であり、国際中医薬膳調理師。東洋と西洋、現代と伝統の両面から食を提案する。国産の生薬や薬膳茶が手に入らなかったことから、日本のローカルをめぐり、伝統健康茶ブランド{tabel}(タベル)を立ち上げる。
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