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【連載】四季のたしなみ、暮らしの知恵(一七)春先の手土産には「向島 長命寺」の桜もちを
2016.03.25
ふだんの暮らしの中で、さりげなく季節の巡りを感じさせるものがあるのは嬉しいこと。春の訪れとともに思い出せる場所、春らしさが目に浮かぶもののひとつに、向島の長命寺に並ぶ桜もちがあります。

早咲きの桜たちがほころびかけた頃、桜並木が満開になる前に、自分はいつも浅草から隅田川に掛かる桜橋を渡って川向うの向島へと散策に出かけます。
古くは花街として栄え、料亭が立ち並んでいたといいますが、今ではその面影は少なく、かえって静かな町並みになっています。けれど、当時からそこにあると思われる古いお寺がいくつかあって、雰囲気もどこか違って見えます。

墨堤には桜が似合います。
関東代表の長命寺の桜もち
そんな墨堤にある、長命寺(ちょうめいじ)の門前にて江戸時代に茶店で売り出されて評判となったのが、「向島 長命寺山本や」というお店のオリジナル桜もちです。桜の葉っぱ3枚を使ってくるまれた、独特なオープンスタイルが特徴です。

限られたスペースですがイートインでは、ヒノキの香りがするトレイに入って、その香りも奥ゆかしさを惹き立てます。
長命寺の桜もちは関東の代表的な桜もちです。一方西側の桜もち代表は、道明寺と呼ばれます。これは蒸したもち米を乾燥させて粗挽きした粉である道明寺粉を使ったものです。
長命寺の桜もちは、塩漬けされた桜の葉っぱに包まれていますが、これは中のもちが乾かぬように工夫した先人の知恵であるとか。実際に、桜にはクマリンと呼ばれる成分が入っていて、ふわっと香るのは、その匂い。クマリンには抗菌効果とともにリラックス鎮静効果もあるそうです。
桜の葉と一緒に。好みの食べ方でどうぞ
食べ方には、いろいろと好みがあろうと思いますが、一般的には葉っぱをはぎ取っていただくのが推奨されます。けれど、桜の葉っぱごと食べて味わうのが自流。ただし、葉っぱも3枚となると、いささか邪魔なような気もするので、せいぜい一枚ぐらいにしてから濃い目の緑茶と合わせていただくのがよいでしょう。
西伊豆に温泉旅行へと行った折、松崎にて、こちらの桜は葉っぱを厳選して桜もち用に出荷しているとの話を聞いたことがあります。それ以来、長命寺の桜もちを口に入れると、伊豆の思い出もほのかな香りと共に蘇ってくるのです。

桜餅の葉っぱに使われる、オオシマザクラです。
「向島 長命寺」では、通年で桜もちを買い求めることは可能なのですが、気分的にベストタイミングは桜の咲く時期。しかしお花見シーズンへと突入する際は、多くの長命寺の桜もちファンが詰めかけますから、店内の混雑は避けられません。少しだけ時期をずらしての来訪が得策かと思います。店内には、数席ですが緋毛氈のイートインコーナ―もあって、お茶とともに300円で桜餅がいただけて、これもおススメです。
しかし、大本命は事前予約のうえ、手土産としてご自身で買い求めるのがいいでしょう。春の便りをお届けでき、笑顔になれること請け合いです。
桜もちの詳細
向島 長命寺桜もち 山本や
- 住所:墨田区向島5-1-14
- 営業時間:8:30~18:00
- 定休日:月曜日
- 予算:1個 200円(税込)、6個入 1,350円(税込)
- 問い合わせ先:03-3622-3266
- 公式サイトはこちら
★★★
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桃猫
東京生まれ。茶人として各地に赴き、日々、中国茶の茶話会を開催。とうきょうの街歩きをフィールドワークとして銭湯、寺社、名跡などを探索するうちに、グルメや趣味の数々をつづったブログ=桃猫温泉三昧を継続し、今年10周年を迎えた。その趣味は多岐に渉り、銭湯と温泉巡りで960湯達成、鉱物マニア、古書蒐集、無類の麺喰いでもある。スピリチュアルな方面にも詳しい。
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