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【連載】四季のたしなみ、暮らしの知恵(一六)七福神のセンター「大黒天」は台所の神様

2016.03.11

パワースポット, 七福神, 大黒天, 神仏習合

これまで恵比寿、弁財天、毘沙門天と七福神選抜メンバーについて紹介してきましたが、大トリを飾るのは、やはり親しみやすさと知名度では抜きん出た、七福神のセンター・大黒天ではないでしょうか。
 
大黒天
Wikimedia commonsより)
 
古くから、大黒天は恵比寿さまとペアで語られることも多く、もとから福神としての信仰がしっかりと根付いていた神様です。えびすが海の神、大黒天は農村部で五穀豊穣を司った田の神(農耕神)として認識されていたこともあって両者が共に祀られることも多く、また農作業の収穫後には大黒祝いという祝宴もあったようです。

豊臣秀吉も信奉した軍神は、いつしか優しい庶民のヒーローに

実は、他の七福神同様、この大黒天もまた、かなり複雑なルーツを持っています。もとはインドの神さまで、荒々しい性格を有した軍神だったようです。その一方では、金嚢を持った財宝神として祀られることがあり、その美術史的な起源は一説では遥かギリシアからローマ時代のヘルメス神まで遡るとも言われています。
 
シヴァ神
シヴァ神
 
さて、この大黒天ですが、インドにおいては憤怒の形相した、破壊と創造の神・シヴァの化身でもあり、戦の神として祀られることもありました。正面に大黒天、右に弁財天、左に毘沙門天が合体した三面大黒天というスタイルで、かの豊臣秀吉が信奉したことでも有名です。太平の世となった江戸時代に入ってからは福神として人気を博すこととなりました。
 
大黒天と小判
浅草・浅草寺では納めの観音ご縁日(12月18日)から年内にだけ、縁起物として授与される、恵比寿大黒御影と大黒さまの縁起小判。(筆者・私蔵)
 
日本においては夜叉としての怖い軍神よりも、ニコニコした柔和慈愛の善神である面を選び取って庶民の現世利益につなげたわけですが、これには最澄の天台密教が関わってきます。天台宗系の寺院では、大黒天は早くから台所の神として位置づけられていました。
 
さらに、出雲神話などに登場する、大国主命(おおくにぬしのみこと)という神様がいるのですが、しばしば、大黒天と同一視されて語られてきました。発音の仕方が同じく“ダイコク”であったためか、いつの間にか仏教神であるはずの大黒天が、神道の出雲信仰に組み入れられ、習合思想のなかで大地を治める神として民間信仰のヒーローになっていくのです。

台所の神さまから家の守護神へ

大黒さんの縁日は、子日(ねのひ)、お祭りは、子祭(ねまつり)または甲子祭(きのえね)です。つまり十二支では、ねずみと関わりが深いとされます。
 
その謂われには、台所の神様として祀られることが多かった大黒天は、厨房に出入りしているネズミを使わしめとして選んだ、と考えられたのではないでしょうか。ネズミは穀物を荒らすイメージがありますが、安産・多産祈願の対象でもあり、小まめに動けて蓄財する、いざとなったら大黒天がネズミを従えて調伏してくださるという意味合いもあったんでしょう。
 
大黒天
Wikimedia commonsより) 

江戸時代の書物によりますと、大黒天の肌の色が黒いのは、美を飾らず、地味な身なりは高ぶらないかたちゆえ、袋には財宝を蔵し、打出の小づちを持ち、米穀を足で押えて豊作を意味しています。
 
大黒さまの人気を、さらに身近なものにしたのは、大黒舞(だいこくまい)という民俗芸能にありました。
 
獅子舞や三河万歳、猿回し、虚無僧などは江戸時代にもあった門付芸能(かどづけ)の一つで、正月に商家を回って祝い事を述べ、祝儀を乞う人たちでした。そうした遊行者として流す祝言人(ほかいびと)のなかには、大黒さまや夷さまの恰好(コスプレ)をしながら福を授けて歩いた、“大黒舞”というのがあって、“大黒スタイル”のイメージを全国へ拡散させていったという面も見逃せません。

都内で巡る大黒天に出会えるスポット

東日暮里の大黒天
東日暮里にある善性寺には安土桃山時代作と伝わった石像の不二大黒天が屋外にあります
 
個人的におススメなのは、こちら。
  • 上野:護国院
  • 目黒:大円寺
  • 牛込柳町:経王寺
  • 向島:三囲神社
なお、神田明神には、現代に作られたものではありますが、大きな石像として屋外に大黒天が鎮座しておりますので必見です。
★★★
 
★わたしらしい「暮らし」ってなんだろう
★きっかけはすっぴん〜シンプルになるきっかけ〜
 
 
桃猫

桃猫

東京生まれ。茶人として各地に赴き、日々、中国茶の茶話会を開催。とうきょうの街歩きをフィールドワークとして銭湯、寺社、名跡などを探索するうちに、グルメや趣味の数々をつづったブログ=桃猫温泉三昧を継続し、今年10周年を迎えた。その趣味は多岐に渉り、銭湯と温泉巡りで960湯達成、鉱物マニア、古書蒐集、無類の麺喰いでもある。スピリチュアルな方面にも詳しい。

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