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【連載】四季のたしなみ、暮らしの知恵(一五)七福神のイケメン担当?虎とムカデを従える戦の神様「毘沙門天」

2016.02.26

七福神, 七福神巡り, 毘沙門天, 神社

笑顔の神様のなかに一人コワモテの毘沙門天

「笑う門に福神来る」。けれど笑顔で並んだ七福神の中で一人イカつい顔をしている神様がいます。それが、毘沙門天です。身に甲冑をまとい、左手には宝塔、右手には鉾(ほこ)を持ち、足元には邪鬼を踏みつけた姿は、迫力があります。
 
毘沙門天
谷中「天王寺」の毘沙門天 御影(筆者・私蔵)
 
もとはインドの神様に発した財宝の神だったのですが、中国に取り入れられるうちに、武神、戦勝の神という面が強調され、その威厳あるイケメンスタイルが定着していきました。また毘沙門天は、多聞天という別の名も持ち、仏教を守るボディーガード的な役割も与えられています。
 
奈良時代、毘沙門天のご利益を知った聖徳太子は、仏法の守護神として篤く敬い、四天王寺を建立しました。戦国時代の武将にとっても、戦に勝つための現世利益を叶えてくれる念持仏として、信奉が篤かったといいます。
 
とくに有名なのが越後の虎・上杉謙信。その軍旗に『毘』という字を掲げ、自らを毘沙門天の化身だと信じ込むほど傾倒したといいます。
 
下谷神社
下谷七福神。下谷の法昌寺にて。毘沙門堂
 
七福神の中でも、ふくよかな恵比寿さまと大黒天が親しみ易く、商店の軒先に飾ってありますが、毘沙門天はキリリとした面持ちの仏神です。ほかの七福神に比べて、除厄に優れ、個別に毘沙門堂があてがわれ、祀られていることが大きな特徴なのです。

毘沙門天に使うは、狛犬ではなく……

正傳寺
江戸時代には三大毘沙門と謳われた、芝金杉橋の正傳寺(正伝寺)毘沙門堂
 
毘沙門天が祀ってあるお堂の両脇には、狛犬ではなく、虎が腰を据えています。その事からも分かるように、虎は毘沙門天の使いとして選ばれており、毘沙門天の縁日は寅の日と決まっています。寅毘沙(とらびしゃ)といえば、その年で初めて迎える寅の日、つまり「初寅」(はつとら)を意味します。
 
源覚寺
春日のこんにゃく閻魔。源覚寺の毘沙門堂
 
そして、もうひとつ、毘沙門様と縁が深い生き物に、百足(ムカデ)がいます。古くから、ムカデは神の使者としてシンボル化されており、その図案は全国の毘沙門天ゆかりの神社仏閣で、絵馬や提灯、絵図などで見ることができます。
 
毘沙門天は戦の神様。ムカデの持つ毒にかけて「毒を以て毒を制す」という意味合いも持ちますが、「お足(おかね)が足りる」とのアナロジーから、金銀財宝を守る神様としても古くから毘沙門天が信奉されてきました。さらに、ムカデが洞窟に棲むことから、鉱山師にとって毘沙門天は守り神の使わしめだったと考えられます。
 
なお、1676年に京都の鞍馬寺では、“お福むかで”という名のもとに、生きたムカデを初寅の日に街人に配ったという記載があります(!)。
 
百足小判
芝金杉橋「正伝寺」の百足小判守。小判の中央にムカデの図案が見られる
 
現在はさすがにムカデは配っていませんが、東京都港区にある芝金杉正傳寺では、江戸時代に配られていた「百足小判」(*1)という福を呼ぶお守を2009年に復刻し、信者に配っています。神楽坂にある毘沙門天・善国寺(2013年より百足ひめ小判として御開帳の日に頒布)、また鞍馬山でも、同じようなものを配っています。
 
(*1)百足小判守(縁起):江戸時代の当山の百足小判を現代に復刻したお守り。毘沙門様の眷属である百足(ムカデ)は昔から縁起物と考えられており「お足」=「お金」が多い、また「出足」が多いことから金運上昇、商売繁盛、人気上昇、人徳向上等の御利益があるとされている。芝金杉正伝寺製、裏面に記載。

毘沙門天に会える都内のスポット5つ

江戸時代には、“十五毘沙門参り“なるものもあって、縁日である寅の日に毘沙門天の祀られている寺社へ参詣する人も多かったようです。今となっては、都内では江戸時代から縁ある毘沙門天の数は少なくなっています。有名どころは、こちらの5つです。
  1. 牛込神楽坂「善国寺」
  2. 芝金杉橋「正傅寺」
  3. 谷中「天王寺」
  4. 四谷「本性寺」(北向き毘沙門天)
  5. 広尾「天現寺」
福を引き寄せる力強さは、戦勝の神として荒々しいほどに、その現実味も勝るというもの。七福神としても、単独の念持仏としても、毘沙門天を篤く信奉してみてはいかがでしょう。
★★★
 
★わたしらしい「暮らし」ってなんだろう
★きっかけはすっぴん〜シンプルになるきっかけ〜
 
桃猫

桃猫

東京生まれ。茶人として各地に赴き、日々、中国茶の茶話会を開催。とうきょうの街歩きをフィールドワークとして銭湯、寺社、名跡などを探索するうちに、グルメや趣味の数々をつづったブログ=桃猫温泉三昧を継続し、今年10周年を迎えた。その趣味は多岐に渉り、銭湯と温泉巡りで960湯達成、鉱物マニア、古書蒐集、無類の麺喰いでもある。スピリチュアルな方面にも詳しい。

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