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【連載】四季のたしなみ、暮らしの知恵(一四)七福神の紅一点「弁天さま」の積もる話

2016.02.12

インド, ヒンドゥー教, 七福神, 上野, 仏教, 吉祥寺, 弁財天

個性派ぞろいの七福神の神様たちですが、紅一点と言えば弁天さま。艶やかで、魅惑に満ちた美しい姿から、しばしば天女などにもなぞらえて祀られました。けれど、弁天さまのルーツは、意外や意外、インドにあったのです。

弁天さまのモデルとなったのはインドの女神

その姿のモデルとなったのは、ヒンドゥー教の女神サラスヴァティー。ヴィーナと呼ばれる弦楽器を抱えているサラスヴァティーと同じく、弁天さまは琵琶を携え水辺に描かれ、水と豊穣の女神とされました。
 
そして流れる川の化身ゆえに、淀みなく流れる調べ=言葉や音楽などを預かる技芸や芸能の神様としても親しまれてきたのです。
 
サラスヴァティー
サラスヴァティー(Wikimedia commonsより)
 
一方で、ヒンドゥー教から仏教に取り入れられた後に、八臂(はっぴ)と呼ばれる8本の手で武器を持ち、災いを祓う戦神となった、力強いお姿の弁天さまもいます。もとから豊穣の女神として、活発な雰囲気をまとうイメージの神様でしたから、福の神としての要素があちこちから加わって多面的になっていったと考えられます。
 
インドにおいては、ラクシュミ―と呼ばれる、のちに仏教に取り入れられて財と富を授ける吉祥天がいます。しかし、いつの間にか吉祥天が弁才天とが、ごちゃごちゃにされて、しまいには「弁財天」と字が読み替えられ、より現実的な観点から弁天さまは金銀財宝を司る女神の代表となります。
 
弁天さま
中央に座すのが弁天さま(Wikimedia commonsより)

弁天さまの縁日は、なぜ巳(み)の日なのか?

弁天さまの成り立ちには、まだまだ続きがあります。
 
弁天さまは、水と豊穣の女神というイメージから、水神さまの化身として龍と蛇などと描かれることも多くあります。蛇や龍を使者とする弁天さまが、蛇の姿をした宇賀神(うがじん)という日本古来の神様と合体し、さらには九頭龍や五頭龍本来の姿であるというような考え方にも結び付いて信仰が深まっていきます。
 
恵み深く日常的で親しみやすい一面と、龍神さえも鎮め治める、近寄り難い様相で災難を打ち砕き運気を開く呪術的要素も兼ね備えさせた一面。弁天さまは、金運と福神のどちらも叶うという庶民が生み出した信仰に根ざしてきました。
 
吉原弁財天
かつての吉原遊郭近くにあるのが吉原弁財天(吉原神社別院)。弁天祠の壁面には東京芸大、武蔵野美大、多磨美大の学生、卒業生等によって見事な弁天さまが描かれている
 
そういうわけで、現在に至るまで、毎月巳の日(みのひ)を弁天さまの縁日とし、この日に弁天さまをお参りするのが良いとされています。巳とは蛇のことを指し、己巳 (つちのとみ) の日の夜に行う弁才天の祭りを「巳待ち」(みまち)と呼ぶようになりました。
 
己巳とは、60日ごとに巡って来るの巳の刻(午前10時)の日時をいいます。今年(2016年)最初の己巳は2月17日です。財が身(巳)に付くとされ、財布を新調したり貯金を始めたり、吉に転じるスタートの日として迎えてみてはいかがでしょうか。

江戸時代には弁財天百社参りもあった人気スポット

一見気が付きませんが、実は弁天さまが祀られているパワースポットや名所は、全国各地へ散らばっています。
 
例えば都内には上野の不忍の池、吉祥寺には井の頭公園などがそれにあたります。
 
さらに鎌倉では江の島や銭洗弁天、芦ノ湖湖畔にある箱根神社、長野の戸隠山、石巻の金華山、安芸の宮島(厳島神社)、琵琶湖の竹生島(ちくぶじま)、奈良県なら天河(天川)、福岡の宗像大社などが有名です。
 
不忍池
不忍の池は、琵琶湖を模して、その中央に竹生島をイメージして島を作り弁天堂を建てたとされる
 
 元禄時代に名勝を記した『江戸惣鹿子』という書物には、当時に“江戸弁財天百社参り“という特集が編まれており、観音札所のように巡礼先が番号付けられて並んでいて、いかに弁天さまが庶民からの支持が篤かったのかが分かります。

福神漬けのヒントは弁天さま?

さて、神社仏閣以外にも、弁天さまが親しまれていたことを伺わせるものが、他にもあります。
 
カレーライスのお供といえば、福神漬け。明治18年当時、新商品として福神漬けを考案したのは、上野池之端にある山田屋(現在の酒悦)という漬物メーカーでした。上野と言えば、不忍の池の近くで弁天様が有名です。それにちなんで、7つの野菜(ナス、レンコン、シソの実、ウリ、大根、かぶ、なた豆)で作られたのが、福神漬けのはじまりとされてます。

四谷荒木町
 かつて花街として栄えた四谷荒木町。その窪地となった策の池にある、津の守弁財天
 
はるばるインドから渡ってきた弁天さまは、豊穣の神として各時代の変遷を享けつつ、様々に姿を変えながら、現代でも変わらない人気を保っています。
 
それは女性が本来持ち得た、何かを産み出す生命力の具現化であり、その生命の躍動感を授かって、富や財など現世利益をもたらすという力そのものであるような気がしてくるのです。
★★★
 
★きっかけはすっぴん〜シンプルになるきっかけ〜
桃猫

桃猫

東京生まれ。茶人として各地に赴き、日々、中国茶の茶話会を開催。とうきょうの街歩きをフィールドワークとして銭湯、寺社、名跡などを探索するうちに、グルメや趣味の数々をつづったブログ=桃猫温泉三昧を継続し、今年10周年を迎えた。その趣味は多岐に渉り、銭湯と温泉巡りで960湯達成、鉱物マニア、古書蒐集、無類の麺喰いでもある。スピリチュアルな方面にも詳しい。

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