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【連載】「食べる」とは「命をいただく」ことだと気づいた日|すこやかに生きるということ⑪

2016.06.19

すこやかに生きるということ, ベジタリアン, 食生活

「食べる」という行為について考えだすと、私はいつも途方もない宇宙の中に放り出されたような気分になります。そこにはいくつもの星があり、人種や文化、宗教、嗜好などといったあらゆる違いから、なにを食べてなにを食べないかというルールが存在しています。
 
長期的に、または一生それらの食事を続ける人もいれば、ダイエットや体質改善、流行に乗りたいからなどの理由で短期的にさまざまな食事制限をする人たちもいるでしょう。
 
ブランチ
 
私も例外ではなく、その時々の興味や理由から、今までにいくつかの食事法を試してきました。薬膳、マクロビオティック、アーユルヴェーダ、ローフード、断糖、禁酒……。だけどある一定の期間を越えるといつも、どの星にいてもなんとなく居心地の悪さを感じてしまい、また次の星を目指して宇宙を彷徨いはじめてしまいます。
 
その中のひとつ、私がベジタリアンの世界に触れた時のことについてお話します。

なんでも簡単に手に入る世の中で鈍っていく感覚と、リアル

大学生の頃、3日間で10羽ほどの鶏を自分たちの手で絞めて解体し、料理して食べるという、いま考えてもなかなか心身ともにハードな体験をしました。
 
もともと肉を積極的に食べる方ではなかったけれど、ビール片手に頬張る焼き鳥の美味しさはやめられないと思っていたし、ベジタリアンやヴィーガン(肉以外の動物性食品も一切口にしない人たち)の食事にもさほど興味がありませんでした。
 
だけどこの体験を終えてしばらくの間は、とても自然にベジタリアンの食事(卵や乳製品はたまに食べていました)を好むようになり、肉が食べたい、食べようという欲求が、自分の中に見当たらなくなりました。
 
自らの手で鶏を絞め続けた精神的なショックもあったのですが、なによりも「命をいただいている」という自覚が急激に自分の中に芽生えたことで、肉はそう簡単に口にできるものではないと気付いたのです。
 
田んぼ
 
現代では、鶏などは食肉として加工され、スーパーに行けばいつでも手軽に買えますし、腐らせずにストックしておくこともできます。私は生まれた時から当たり前にあったこの便利さの中で、「命をいただいている」という感覚がすっかり鈍っていました。
 
食肉の姿になるまでには、必死に抵抗する鶏を押さえ刃を入れて血を抜き、羽や内臓をきれいに取り除き、解体していくという工程があります。すべてを自分で行うことで、それがいかに体力と気力を要する作業なのか、鮮度を保つのがどれだけ大変なことかを実感しました。だからこそ、手際よく解体して料理できたときは震えるほどに美味しく、反対に解体までに手間取ってしまった時は泣きたいくらいに申し訳なくなり、大袈裟ではなく、いつだってすべての作業が真剣そのものなのです。
 
食肉になるまでの大変さを知ったら、今度はどのように育った鶏なのかが知りたくなりました。口にして消化し、私の一部となった鶏はどこで何を食べ、どんな景色を見てきたのか。そういったことを調べるうちに、あまりにも閉鎖的で悪環境ななかで育っている鶏が多いことに、私はまたショックを受けました。それでも悩んで葛藤し、今は自分なりの答えを見つけて、たまのことではありますが、自分で肉を食べる時は、なるべく自然に近い環境で育った新鮮なものを選ぶようにしています。

食べる“もの”も大切だけれど食べる“時間”も大事にしたい

いくつかの食事法を試すうち、わたしは自然とベジタリアン風の食事を選ぶようになりました。けれど、厳格なベジタリアンになったかというと、そうではありません。その理由は、いたってシンプルなものです。
 
「同じ釜の飯を食う」とはよく言ったもので、大切な誰かと一緒に同じものを食べて、「美味しい」を共有することが私にはとても重要です。それは必ずしも近しい人だけでなく、なんらかのこだわりを持って食材となるものを育てている人や料理をしている人、食事をする人が心地よく過ごせるように気配りされた空間で、もちろん食材にも最大限の感謝を込めて「美味しい」を伝えることが、私にとっての幸せな食事なのです。
 
だからそういった場で肉が料理となってやってきた場合、私は喜んでいただくことにしています。

食をとりまく世界での経験を通して、自分に本当に合うものを知る

一方で普段の食事はほぼ菜食です。玄米菜食を提供している「穂高養生園」で暮らしているからというのも大きいですが、一時的にでも肉を食べることをやめたことで、それまで気付かなかったからだの変化を感じるようになったのです。
 
ごはん
 
たまに肉を口にすると、その変化は食べた少しあとから翌日にかけてよくわかります。まず、口に含んで数回噛んだだけで強い旨味を感じ、気が上がるというか、自分の中のなにかが興奮して覚醒するような高揚感があります。私の場合はごく少量ならば平気ですが、美味しくて思わず食べ過ぎると、翌日のからだは重く、どこか気怠くなり、頭の回転も鈍るような気がしています。お休みの日なら問題ないのですが仕事があるときは、やはり普段の食事では控えた方が調子が良いのです。
 
短い期間ではあったものの、ベジタリアンの世界に触れていたからこそわかった自分の心とからだのこと。いろいろな世界の食事法に触れてきて、そこでの発見が今、私の食事の在り方をかたち創っています。
 
そして、現在の私がこれから探究していきたい「食べる」にまつわる世界についてはまた次回。

★★★
 
★薬膳と暮らす台湾の日常
★きっかけはすっぴん〜シンプルになるきっかけ〜
★すはだで暮らすひと
工藤知子

工藤知子

1988年、北海道函館市出身。2008年、上京。大学で心理学、農業、フェアトレードなどを学ぶうちに、心と身体がすこやかであれば幸せに生きることができると思い至る。卒業後、有限会社あきゅらいず美養品へ入社。商品管理・広報などの業務の中、中医学・食養生などを学び、肌は心と身体の鏡であることを実感。2014年、退職を機に東北を中心に旅をした後、帰郷。4月より穂高養生園のスタッフとして長野県安曇野市で暮らし始める。現在は、心と身体がすこやかであるための探究をライフワークに、知恵と実践を求めて修行中。

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