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NYの森からきれいに私生活

第43回 天使に会ったことがありますか?

2016.05. 8

天使, 小原ミチル, 小手鞠るい

私はキリスト教徒ではないし、特別な宗教を信じているわけでもないのだけれど、この世に「天使はいる」と思っている。
 
南米生まれのある作家が著書の中に、このようなことを書いていた。
 
「天使はいつでも俺たちを守ってくれる。味方になってくれる。呼ばなくても、いつでもそばにいる。たとえばこの河、この青空、この古い橋。天使はいつもここにいる」
 
読んだ時「なるほど」と深く納得した。私にとっての天使は3人いて、ひとりは母方の祖母、もうひとりは幼い時に亡くなった妹、3人目は10年前に亡くなった猫である(あえて、3人目と書かせていただきます)。3人ともすでにこの世にはいない。しかし、作家が書いているように、この3人はいつも私のそばにいるし、たとえば河になり、たとえば青空になり、ある日は橋になって、いつも私を守ってくれている。
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そういえば、以前、アメリカ人の友だちがこんなことを言っていた。
 
「天使というのは、いるか、いないか、じゃないの。『いる』と思う人にとってはいるのだし、『いない』と思う人にとってはいないの。要は、信じるか、信じないか、なのね」
 
この発言を聞いた時にも、その通りだなと思った。私は天使の存在を信じている。だから「天使はいる」-----。祖母は愛の天使なので、私が人との関係に悩んでいるときなどには必ず現れてアドバイスをくれる。妹は仕事の天使。妹の生きられなかった人生、就けなかった仕事を私は全部、彼女からもらっているのだと思っている。私が全幅の信頼を置いている編集者には年下の女性が多いことも、このことと関係しているように思えてならない。猫は家内安全、夫婦円満の天使。亡くなってもなお天使として、私たちを守ってくれている。天使とはすなわち、守護神なのである。
 
つい最近、天使作家として知られる小原ミチルさんに巡り合った。彼女は自分でデザインした天使の人形を創っているアーティストであり、詩人でもある。オーブン粘土----オーブンで焼くと陶器状になる----を土台にして、レースや天然石、スワロフスキーと呼ばれるクリスタルガラスなどで飾り付けをし、ラメなどの塗料を使って仕上げた天使の人形は、展覧会やイベント、ネットショップなどで人気を呼んでいる。
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ミチルさんが不思議な天使体験をしたのは、今から17年前のある春の日のことだった。悪化する持病、痛み、進行する病気に対する不安のせいで、鬱状態に陥っていたミチルさんは「自分がただの物体のように感じられて、浜辺に置き去りにされた流木みたいに、まるで生ける屍のように」ベッドの上に転がっていた。
 
そのとき、天井から「ゆっくりと右回りで回転しながら」降りてきた天使に出会う。
 
天使からミチルさんに届けられたメッセージは「無償の愛」だった。
 
「天使は何も要求しない。もっと頑張れ、なんてことも言わない。ただ、愛してくれていたんです。このままの、私という存在を。この世に、やっと生きているだけの、私を」
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それまでの長きにわたって、ミチルさんにとって無償の愛とは、小説や物語の中にある「言葉だけの存在」であり、「この世には存在しないもの」だったという。しかしその春の日、ミチルさんは「無償の愛」とは言葉だけの存在ではなく、この世に実在する愛であり、実践できる愛である、ということを体感し、理解した。
 
以来、16年以上、ミチルさんは天使を創り、天使を必要としている人のもとに届けている。「どんな時でもあなたを愛しているよ」というメッセージを形にしたもの。それがミチルさんの天使の人形なのだ。ミチルさんは語っている。
 
「自分を愛せない、自分を許せない、自分だけがこの世からはみ出してしまっているのではないか、そんな気持ちにかられて悶々としている、かつての私のような人たちに、天使たちの微笑みと眼差しを届けたいのです」
 
 
ミチルさんは、天使から受け取った愛を、愛を必要としている人たちに手渡そうとしている。彼女の天使体験とその後の活動を知った私は、これこそが天使、彼女自身がまさに天使、やはりこの世に「天使はいる」と思った。
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「私は、すべての人に『天使な部分』が存在していると感じています。天使体験をしたことで、私はその存在を表現することに『照れ』や『抵抗』がなくなったんだと思います。これは私じゃなくて『私の中の天使がしていること』って思えるのです」
 
最後に、ミチルさんの書いた詩-----今の私に届いた天使からのメッセージ-----をご紹介します。
 
高く遠く飛ぶためには
より深く
身を屈める必要があるように
 
高く険しい山に登る時ほど
高所順応に
充分な時間をかけるように
 
大切なことや
大きなことをやる時ほど
ゆっくり、じっくりが
大切なんだよね
 
気持ちは焦りやすくて
気負いに背中を押されては
思わず駆け出したくなるけど
 
深呼吸。眼を閉じて
深呼吸。五感を研ぎ澄まそう
 
助走はゆるやかに着実に
一歩一歩を確かめてゆこう
本当に大切なチャレンジのために
 
『天使を連れて旅を詩よう♪ 天使たちの季節<2>夏』より。
 
ミチルさんの天使体験については、以下のサイトでお読みになれます。
 http://cocoro-michilu.com/profile2.html

(写真:グレン・サリバン)
 

 
 
小手鞠るい(こでまり るい)

小手鞠るい(こでまり るい)

1956年生まれ。小説家。1981年、やなせたかしが編集長をつとめる雑誌「詩とメルヘン」の年間賞を受賞し、詩人としてデビュー。1993年、『おとぎ話』で第12回海燕新人文学賞受賞。1995年、受賞作を含む作品集『玉手箱』を出版。2005年、『欲しいのは、あなただけ』で第12回島清恋愛文学賞を受賞。2009年、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』でボローニャ国際児童図書賞。主な著書に『空と海のであう場所』『望月青果店』『九死一生』『美しい心臓』『アップルソング』『テルアビブの犬』『優しいライオン---やなせたかし先生からの贈り物』『私の何をあなたは憶えているの』など多数。
仕事部屋からのつぶやきは→https://twitter.com/kodemarirui

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