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【連載】愛されていないと不安な「一人がこわい系」のカン違い|○○系からの成仏(5)

2017.01.14

○○系からの成仏, 一人, 女性, 暮らし

“お一人様”に寂しさや不安を感じてしまう人は、少なくないように思います。けれど寂しさの本当の原因は、一人でいるという物理的な状態ではなく、一人がこわいという思い込みから来ているのかも。4コマ漫画エッセイストのヒビノケイコさんと一緒に、“自分らしい質の良い一人”を楽しむコツを紐解いていきます。
***

○○系


20代の女友達、ななちゃんと話していたら、こんな話題になった。

恋人がいないと、誰からも愛されていないように感じて、そんな自分が嫌!って思うんです。人からどう見られているのかを気にして、人気がある自分を見せたいとか、彼氏や誰かと充実してそうな自分を見せたくなって、そんな風に振舞っちゃうんですよね」。

愛されてる自分には、価値を感じられる。
けれど、愛されてない自分には、価値を感じられない。

無意識的にそんな風に考えている人は、もしかしたら多いのかもしれない。

彼女たちは、「わたしは、一人じゃない。彼氏、家族、仲間がいるから、幸せ」と言う。

でも本当は、一人が怖い、一人でいられない。
一人の時間になると、孤独や得体のしれないもやもやに押しつぶされそうで、友達や仲間と遊ぶ。そして、充実してるよ!って様子を、SNSに投稿する。

ほんとはね、誰かに必要とされていないと不安なんだ。
だから、モテたり好かれたりすると、一瞬安心する。
嫌われたくないから、相手に合わせる。

けれど、それでは自分を心の底から満たすことはできない。

まるで、自分で自分をコツコツ愛でる時間をすっ飛ばして、誰かにいきなり「愛をください!」って言ってる、雑な状態なのかも。

そんな、「一人がこわい系」さんへ。

その気持ち、とってもよくわかる。わたしの中にもあるかもしれない。でも、愛情は与えてもらうものではなくて、自家発電するのが基本なのかもしれないよ。

自家発電させるのに必要なのは、例え一人でいても寂しくない「質のよい一人」の時間。


「質のよい一人」は、どうやって楽しめるようになるのかな?

毛布



誰かに合わせて周りを優先するうちに、自分が苦しくなる

ななちゃんは、続けてこう話し始めた。

「……わたし、最近彼氏と別れたんです。でもそれ以降、一人でも寂しくなくって、自分でも驚いてて!」

わたし「へえ~なんでだろうね!二人でいるほうが寂しかったとか?」

なな「そうかもしれないですね。わたし、知らないうちに、彼に対してイエスマンになってたなって。相手の好みや判断基準に合わせてた。これはしたくない、イヤって言ったら、突き放されちゃうんじゃないかって、いつもビクビクしてたんです」

わたし「自分を見せて拒否されるのが怖かったんだね。相手に合わせてるうちに、嫌いな自分になっていかない?」

なな「そうそう、自分のこと好きじゃなくなって。わたしは彼じゃないから、結局期待される姿にはなれないことに気がついて……。相手ありきだと、自分が自分でなくなっていくのを実感しました。別れようかと思い始めた時から、自分のことをいたわれるようになり、必要なコトやモノやヒトがわかるようになって。これさえあれば、もう大丈夫と思えるようになったんです」


自分のための時間の過ごし方

「彼氏のために~する」「彼氏がいるからおしゃれする」「自分を磨く」ということは刺激的で楽しいけれど、それに寄りかかり過ぎていると、思った反応が得られなかった時に副作用も大きくなる。

家族ができれば「家族のために働いている」と思うのがモチベーションになるときもあるけれど、その物語が行き過ぎると、抱えてしまって辛くなることもある。

“誰かのために”を行動の指針にしていると、いつの間にか”自分のため”の時間の過ごし方がわからなくなってしまう。それは、誰かへ尽くすことはできても、自分に尽くすことはできていない状態。

“誰かのために”は一見美談のように思われるけれど、自分を削って疲弊しているなら、美しくない。
人に合わせたり、優先しすぎるタイプの人は、もっともっと、自分の楽しさと好奇心、したいことに気付いてあげてほしい。

どんなに地味なことであってもいい。やりがいを持って、ひそかにわくわくして生きると、自然に周りが元気になる。

暖かく優しく、自分への愛情が満たされていくと、あまった分を人にわけてあげることもできるようになる。

そんな人たちが重なって出来上がるかたちは、一般的なパートナーやカップル像とは違うかもしれない。けれど、本人たちが満たされてできる自然なかたちなのだから、感覚に自信を持てばいい。

一人でいることは「誰とも関わらない」「誰にも頼らない」ということではない。


○○系


二人で話をしている最中、ななちゃんは「けいこさんって、オープンマインド系の“一人”ですよね」と言った。

「わたしはシャットダウン系の一人かもなって思うんです。なんでも自分で解決しようとしちゃう。余裕がなくなると人の意見も聞けなくなるし、相談もしません。それは相手を信頼していないからなのかもって思うんです」と。

わたしも強がって、言うべきことも言えなかったり、変に抱えて頑張りすぎたりすることもある。

でもね、自立するというのは一人で強がって冷たく「誰にも頼りません!」っていうことではなくて、周りを信頼して頼るところは頼る。信頼して任せる。そのままの自分も見せるし、意見もすなおに聞く姿勢のこと。

そうすると、周りを遠ざける一人ではなくて、肩の力が抜けたあたたかい一人になれる。

仕事も恋愛も、誰かとの関係性の中で起こること。自分の意見は示した上で、相手の見解を聞いてみると、例えそれが反対の意見であっても、なるほどなあって思うことがある。

自分の中だけで完結させないほうが、アイディアや考え方に広がりが生まれることも、たくさんある。

わたしの話を聞いてななちゃんは「シャットダウンせずに他者をすなおに受け入れられる余地は、どうしたら生まれるのかなあ?」と言った。彼女の言葉を聞いて、わたしは自分の芸大時代の話を思い出した。

「わたしの場合は、自分が考えられる範囲なんて、ものすごく限られていると思っているのかも。芸大に通っていた時に、みんなが作る作品の想定外の凄さを目の当たりにしてきたんだ。人って同じテーマでもこんなに発想が違う、面白いものが作れるんだなあって。

思ったようにならないこともあるけど、思った以上になることも、いっぱいある。そんな経験をたくさんしてきたし、自分の知らない世界を知っている、もっとすごい考え方ややり方があると思える人に対しては、信頼できるのかもしれないね」。


最初から相手に合わせにいくと、いいものは生まれない。質の良い一人同士が重なり合った時、新しい音楽を奏でる

ななちゃんと、質のよい一人について話しているうちに、「じゃあ、質のよい二人や三人って、どういうものだろう?」と考えるようになった。

そしてふと、プロドラマーの友人の言葉を思い出した。彼女は日本を代表する著名ミュージシャンのバックで叩いているのだけど、仕事を長く続けるうちにわかってきたことがあるという。

「最初から相手に合わせに行くと、いい音楽にならないんだよね。まず、”自分はこういう考えで、こういう音楽でいけばどうかと思っている”という意思表明をする。お互いにテーブルの真ん中に意見や音楽性を出し合って、その上で生み出していくと、面白い音楽になることが多いよ」と。

二人の前に、一人。
三人の前に、一人。
みんなの前に、一人。

一人だからって自分だけ良ければいいのではなくて、自分を尊重すると同時に、相手も尊重できないと、誰かと組み合わさった時、いい音楽は生まれない。じゃあ、相手を尊重するにはどうしたら?というと、自分への信頼がないと、できない。

自分への信頼は、日頃から自分自身をメンテナンスし、そのまま愛し、育んでいくことで生まれる。

自分を労わる一人の時間を省くと、自分の意見や意思を伝えることもできないし、人の意見を聞く余裕も持てない。これは、恋愛や仕事で人と人が組み合わさった時にも、同じことじゃないかな。

自分だけで「溜める時間」。そして、「爪を研ぐ時間」。それは、足りないものより、周りにあるものに気がついてゆく、じわじわした時間。そして、誰も見ていない地道な時間の積み重ね。

誰かに合わせるだけではなく、でも誰かを受け入れる器もある、質の良い二人や三人が出現する。


さいごに

○○系


誰かにどう見られているか、誰かに必要とされているかより「もっと一人を楽しんでいいんだよ」。

lonelinessとalonenessは違うよね。

lonelinessを、連れがいない、寂しい・・・という孤独感とすれば、alonenessは、質のよいひとりを楽しめるというニュアンス。

「質のよいひとり」を、ゆっくり作っていけばいい。

「一人がこわい系」へのおくすり

処方箋
  • 自分のために、一人の時間を作ってあげること。
  • 足らないものばかりではなくて、そこにあるものを見つけること。
  • 自分を可愛がり、いたわってあげること。
  • 人の評価の前に、自分で自分の感覚を信頼してあげること。
  • 何が心地よくて、何が心地悪いのかを感じ取り、無理に人に合わせないこと。
  • 相手がどうなのか?ではなく、自分は何がしたくて、したくないのか見極めること。
  • その上で、自分の意見と相手の意見を同じテーブルの上に、すなおに置くこと。ふたりが重なって育っていく作品を楽しんで。
★★★
★自然由来のものと育む、すこやかな暮らしのヒント
★木の香りで癒され、美のエネルギーを蓄えよう
★わたしらしい「暮らし」ってなんだろう
  • 暮らしの記憶                                 

ヒビノケイコ

ヒビノケイコ

4コマ漫画エッセイスト。9年前京都から高知の山奥、嶺北エリアに移住。自然派菓子工房ぽっちり堂オーナーをしつつ、作家・講演活動をしています。新しい時代に必要な視点と、多様なライフスタイルを地域から発信中。移住、ローカル、女性の軸、仏教、子育て、アートがテーマ。 ブログ「ヒビノケイコの日々」http://hibinokeiko.blog.jp

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