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【連載】嫁姑の不思議な関係。居心地のいい距離感を描くには?|酸いも甘いも家族の内④
2016.01.29
姑, 嫁, 悩みごと, 結婚, 酸いも甘いも家族の内

女性にとって「嫁姑」という関係は、あまり良いイメージがないかもしれません。一人一人の個性、組み合わせによって全く違う、女同士の不思議な関係。今日は、わたしがよく聞く嫁姑の悩みから、なるべくお互いが気持ち良く関われるコツまで、考えていきたいと思います。
嫁と姑のあいだに生じる、よくある悩み2つとは
友人たちに聞いてみた結果、嫁姑の悩みは、だいたい2つに分類できることがわかりました。
1つ目:生活習慣の違い
やっぱり、「食」の違いは大きいみたいです。
例えば、ナチュラル派のお嫁さんと、効率・手軽さを優先するお姑さん。出汁から取るお嫁さんと、インスタント出汁のお姑さんで食の好みに違いが生じます。「子どもにはなるべくからだに良いものを食べさせたいんだけど、言いにくいんだよねー」と悩むことも。
洗剤の種類なんかも、そう。「ナチュラル洗剤で洗うと仕上がりが物足りないのか、後で2度洗いされるのが辛くて……」と泣きながら友達に相談されたこともあります。
人にもよりますが“効率と手軽さ優先”の親世代、“エコナチュラル”をスタンダードとして育った子世代で、価値観の違いがあるような気がします。「洗剤で悩むなんて大げさな!」と感じる人もいるとは思いますが、選ぶものはその人の思想や価値観の現れ。本気で葛藤するのも、分からんでもないのです。
あとは、良かれと思って散らかった部屋を掃除したら、「あの状態が気に入っていたのに」と怒られた、とか、家事の仕方が気に入らなくて姑さんから責められた、とか。そんな生活習慣における違いがバトルを生んでしまうみたいです。
2つ目:育児方針の違い
今と昔では、母乳とミルク、抱っこの仕方、病気への対処法など、良しとされている育児方法が違います。アップデートされていない知識を押し付けられると、お嫁さんはしんどい。「私たちの時代は……」「これが良いのよ」などと、お姑さんに言われるとイヤでも断りにくいしね。いろいろな情報を見聞きし、経験する中で、自分たちなりに採用すること・しないことは決めたいものです。
「おばあちゃんちにいくと、子どもにおやつを与え過ぎて困る」「ちょっとしたことで心配されすぎてヤダ」という声もあれば、逆に「孫の面倒をみるのはプレッシャー」なんて声もよく聞きます。
素直であることが一番の近道
「で、ヒビノさんちはどうなの?」
と、思われる方もいるでしょう。
あのー……壮絶なバトルとか大きな悩みとか期待されている方は、ごめんなさい。わたしは、超ラッキーな姑に巡り会ってしまったのです。
今から9年前、わたしは夫のふるさとである高知県の嶺北エリアに移住しました。夫の両親は我が家から車で5分の場所に住んでいて、子育てのサポートをしてくれたり、週何度かは一緒にご飯を食べたりと、仲良くしています。

時々、お互い思うところがあるにしても、基本的に仲良く暮らせるのは、ほとんど姑の懐の広さによるものだと思っています。姑は、若いころから病気や子どもの死など、様々なことを経験してきました。痛みも分かるからこそ、人に寄り添え、また自分と人を分けて考えられる寛容さがあります。そんな彼女の姿は、女性の先輩として尊敬しているんです。
円満の秘訣? うーん。あえて言うと「イイ嫁ぶらず素直でいる」ことかなあ。
わたしは、ぶっちゃけ「一般常識があり上品な素晴らしい嫁像」とは正反対の「何をするか分かんない破天荒な嫁」。ですから、猫をかぶらず素のキャラを見せて、腹を割って付き合えるようにしてきました。今後、何十年も付き合っていくであろう姑に、イイ子ぶっていても化けの皮はすぐはがれます。相手を尊敬しながら自分に素直でいることは、肩の力が抜けた“無理のなさ”を作ってくれるのです。
実母でないから話せることもある
あと、「実の娘でないから話せること」もありますね。これ、意外なんですが。
実の娘というのは、自分の希望を当てはめて考えてしまい、違う方向にいくと口出ししたくなるもの。だけど、嫁は実の娘じゃないからこそ、違いを喜んでくれるんです。
姑は「わたしは内向きで家庭や地域にこもってきたタイプやから、ケイコちゃんが外にどんどん出て、仕事の幅も広げていくのは、見ていておもしろい」と、応援してくれます。本当にありがたい。
わたしも、実の親でないからこそ相談しやすいことがあります。実母の場合、「娘が悩んでいる」と知れば、余計な心配をする恐れがあるじゃないですか。遠くに住んでいて状況が見えない中、無用に不安にさせたくないので、出来るだけ悩み相談はしないようにしているんです。
でも、近くで普段の様子を見てくれていて、わたしたちの生活や仕事の全体像をつかんでいる姑には、今悩んでいること、たとえば地域の方々とのお付き合いの仕方や、子育てのこと、女性のからだのことなどを相談しやすい。夫を間に入れなくても、一人の人間としてざっくばらんに話せるんです。
嫁と姑の関係は異文化交流。割り切って暮らすための5つのマインド
「いやいや、うちの姑はそんなタイプじゃないし……」という関係も、もちろんあると思います。ですので、嫁姑の関係に関して、なんとなくモヤモヤしていたり、悩みが尽きなかったりする方のために、わたしなりに学んだ5つの心構えをご紹介しますね。
(1) いいところも悪いところもお互いさま。自分を振り返る

相手の嫌なところばかり数えて「ムガー!」となってしまう時、ありますよね。そんな時は、相手に意識が向きすぎている証拠。イライラするのは、「自分はどうだろう?」と振り返るべき合図だと意識します。振り返ると、自分の調子が悪い時にイライラしているものなのです。
そして「相手にとっての自分は、どういう風に見えているだろう?」とも考えてみます。相手を批判をしたり苛立ちを募らせたりするのではなく、少し客観的に自分を捉えるのが大事です。
そして「相手にとっての自分は、どういう風に見えているだろう?」とも考えてみます。相手を批判をしたり苛立ちを募らせたりするのではなく、少し客観的に自分を捉えるのが大事です。
(2) 甘えるところは甘え、助けるときには助ける
「忙しいでしょ?ごはん食べていきなさい~」など、あちらが申し出てくださったことは、無理のない範囲で気持ち良く受け取ります。反対に「外出するから家で介護している、おばあちゃんの様子を見ていてくれる?」と頼まれた時には出来る範囲で助ける。お互いに、支え合える関係性を築くことができます。
(3) マイナス面だけじゃなく、プラス面からも見る
冒頭で紹介した子育ての悩み。姑・舅が子育てをサポートしてくれるのはとても助かる一方で、どうしても子どもにはユルくなっちゃう。ただ、よく捉えると夫婦だけでは与えられなかった価値観・昔ながらの知恵を子どもが身につけられるんですよね。
プラスとマイナスのどちらも考えた上で、自分たちが必ず大切にしたい方針・ルールは姑に伝える。それ以外は大雑把に良しとして、気楽さを大切に。
プラスとマイナスのどちらも考えた上で、自分たちが必ず大切にしたい方針・ルールは姑に伝える。それ以外は大雑把に良しとして、気楽さを大切に。
(4) “自分にとっての当たり前”を当てはめない
冒頭で話した生活習慣の違いなんかも、要は「自分にとっての当たり前」「正しさ」を相手にも当てはめるからトラブルになります。やっぱり基本は、お互いに相手のやり方に踏み込まないこと。
「相手が間違っているから正さなきゃ」ではなく「それぞれのやり方がある」と考えれば、気持ちがほぐれ「あなたの使ってる洗剤は、どういうところがいいの?」なんて興味を持ってくれることも。その時に楽しく答えることができれば、すてきです。
「相手が間違っているから正さなきゃ」ではなく「それぞれのやり方がある」と考えれば、気持ちがほぐれ「あなたの使ってる洗剤は、どういうところがいいの?」なんて興味を持ってくれることも。その時に楽しく答えることができれば、すてきです。
(5) 「墓」「空き家」など後回しにしがちな重要問題を話せる関係を作っておく
わたしの夫の両親は法律関係の仕事をしているため、普通の人が言葉を濁して後回しにしがちな話(土地、空き家、墓の問題など)を明快に話してくれます。このように、後々大きなトラブルになりそうな問題も、両親と普段から信頼関係を作り、腹を割って話せるようにしておくと不安を取り除けます。
ソフト&ハード面での絶妙な距離感が鍵
最後に、嫁姑のすてきな関係の決め手は「距離感」なんじゃないかな。精神論も大事だけど、物理的にも距離を持つことで、お互いの心の状態を保てます。友人の中には「同居から近所で別居する生活に変えただけで、あんなにケンカしてた姑に感謝できるようになった」という人も。

ソフト面では、お互いの思想・生活習慣・やり方に踏み込まないこと。そのために、自宅でいる時は自分たちのルール、実家にいる時には実家のルールを採用すると決めるのです。人は「否定された!」と思うと攻撃的になります。だからまずは相手への「承認」をしっかり置いて、聞く耳を持ってくれたら提案すればいい。
ハード面では、プライベートスペースを持つことが鍵。うちの場合は車で5分の場所で別居ですが、これ、絶妙な距離感なんです。何から何まで全部一緒だと、いくら仲が良くてもキツい時があります。自分のスペースがあって心の余裕が保てるうちは、トラブルにもなりにくいし、相手にも気が回ります。
「長男の嫁だから同居しないと」「夫が同居したほうがお得だと言うから」ではなく「どんな距離だったら自分にも相手にも優しくできるか?」と考えてみてください。きっとこの答えは、それぞれ違うと思うけれど。
気持ち良く暮らせる距離をとる。それは罪悪感を抱くようなことではなく、お嫁と姑、互いを大切にするための円満の秘訣だと思います。
今日の家族問答
お嫁さんと姑さん、心地よく暮らすために、今日からできることは何でしょう?
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ヒビノケイコ
4コマ漫画エッセイスト。9年前京都から高知の山奥、嶺北エリアに移住。自然派菓子工房ぽっちり堂オーナーをしつつ、作家・講演活動をしています。新しい時代に必要な視点と、多様なライフスタイルを地域から発信中。移住、ローカル、女性の軸、仏教、子育て、アートがテーマ。 ブログ「ヒビノケイコの日々」http://hibinokeiko.blog.jp
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