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【連載】いつまでも夢見る「結婚さえすれば系」じゃいられない|○○系からの成仏(4)
2016.10.28
「結婚」。この言葉に対して、すてきな夫婦生活、子沢山の賑やかな家庭、ウエディングドレスなど華々しいイメージを持つ人は少なくないように思います。でも、結婚って本当にそんな単純なモノなの? 20代後半になると結婚ラッシュが訪れるけれど、そもそも結婚しなきゃいけないなんて誰が決めたの? そんな悶々とした「結婚」に対する疑問を、4コマ漫画エッセイストのヒビノケイコさんにぶつけてみました。
***
「けいこさん、結婚について、どう思います!?」
ある日、20代の編集者・立花さんから勢いのあるメールが入った。
うーん。結婚かあ。
わたしは、結婚してちょうど10年。「絶対結婚したい!」というわけでもなく「この人と暮らしたら楽しくやっていけそう」と思い、してみた。その結果、続いてる。
立花さんいわく「そういう、ナチュラルな感じじゃなく、”結婚さえすれば系”ってのがいるんですよ!」とのこと。
ああ、それね。
20代、30代、既婚のひとたちから、結婚にまつわる話はよく聞く。
今日はその話をしよう。
「結婚しました!」って言いたい、20代女子

私が25、26歳くらいの頃、第一次結婚ブームが来て、周りの同級生がどんどん結婚していった。そんな中、焦る子が出てくるんだよね。
その焦る子たちの結婚イメージは……キラキラしていて、ウェディングドレスのお姫様。旦那さんに、「僕のお嫁さんステキでしょ?」って言ってもらえる自分がいる。
彼女たちの多くは、みんながしているからという理由でなんとなく就職して、でもそんなに仕事に思い入れはなくて、「わたしのために仕事をがんばってくれる夫がほしい。専業主婦になりたい」とも言う。
その奥には、「養ってもらいたい。愛されてる自分になりたい」という気持ちが見え隠れする。そして、「とりあえず籍を入れたら勝ち!」という勢いで、男性に気に入られようとする行動力があって、わりとびっくりする。
無事、結婚しても、「まるで“山が好きだから山を登る”んじゃなく、“山ガールである、おしゃれでアクティブな自分が好きだから、山を登る”女みたいだな」と思う。
男性のほうも、「オレ、結婚できたんだよ〜〜!!!」と、「結婚できたオレ」に喜び「既婚者であるオレ」に優越感を感じてる人をたまに見ることがあるんだけど、「どんだけ自分に自信がなかったんだよ!」って思う。
「自分個人で、自分に自信を持てなかったのか?」って。
「相手と作っていく結婚生活」じゃなく、「結婚すること自体がキラキラした最大のゴール」であり、「それがクリアできた自分が大好き!」にフォーカスが当たっているのって、なんかヘン。
「自信がない→結婚する=愛されてるジブン=承認が得られる→自信が持てる」。そんな公式で。
でもさ、結婚したって、ほんものの自信はつかないし、根本的な人間の孤独は誰にも埋めてもらえない。最終的に孤独は自分で乗り越えるしかない時だってあるし、自信は自分で行動した結果、得られるもの。
自分が一人で自立できた時、自分のことだけにフォーカスがあたるんじゃなく、相手にもフォーカスがあたって、愛せるんじゃないかな。
愛することにゴールはなく、結婚した瞬間が、ともに歩む努力のはじまり。
- 男性を逃さないために努力する人(自分を幸せにしてもらうために)
- 自分に実力をつけるために努力する人(自分と相手を幸せにするために)
この2種類がいるなら、後者の方が、人として魅力的に映ると思うな。
でもね、「誰かに人生を委ねてしまいたい。コントロールされたい」。そんな気持ちも、やっぱりわかるような気もする。
グラグラした時代の中で、たった一人で生きていくことの心細さは、確かにあるから。でも、どんな環境だって、保証はない。それなら、自分で軸を握って生き、いざとなれば、相手も幸せにできるくらいの女性であったほうが、素敵だと思う。
誰かに委ねた夢の中じゃなく、自分の努力で自分を磨こう。
「結婚してないなんて、ワケあり?」と思われたくない30代女子
30代になってくると、また違う種類の声を聞く。
「30半ばで結婚してないと、どれだけ屈辱的な思いをさせられると思う? バツ1ならまだしも、結婚したことないなんて、『ワケありなんじゃないの?』っていう目で見られるし。『まだしないの?』とか、『いい人いないの?』ってまったく関係ないそのへんのおじさん、おばさんに言われるんだよ。ほんと生きにくい~」。
そっかあ……それはしんどいだろうなあ。いやだよね、関係ない人にそんなこと言われるのは。

最初はなんとも思っていなくても、年々周りの考えに染まって卑屈になったり、壁を厚くしていったりする友達もいる。
最近、そんな友達のひとりに、変化があった。
今まではずっと、「結婚してなくてバカにされるのが嫌だから、福利厚生があるひと、保証付の人と結婚したい。経済的な基盤をもっと安定させるためにも……!」と言っていた彼女。
男性と出会っても「即!結婚!」と思い浮かべてしまうようになり、いろいろ考えすぎて気軽にデートすらできない。そんなこんなで5年……という状況に陥っていた。
そんな彼女に、ふいに好きなひとが現れた。彼には保証はないけれど、自分のしたいことを仕事にして生活していて、とても人柄がいい。自立している女性を尊敬している、魅力的な男性だ。
彼と出会ってから、彼女の発言が変わってきた。
「前までは、なんとなく不安だから結婚したい、あわよくば養ってほしいと思ってたんだけど、この人となら、わたしは一生仕事をやめないで、自分のしたいことを一生続けていけるかも!って思ったんだよね。お互いやりたいことを支え合えってゆける相手。それも、いいのかもなって」。
がんばって自分から声をかける。そうすると、向こうも素直に答えてくれる。男性を逃さないための駆け引きをするのではなく、自然体でいられるのが楽しいみたい。
「自分が素直になれたことが、いちばん良かったなあ。今までは結婚にとらわれてガチガチになってた。そこから解放されただけでも、壁を乗り越えられた気がする。もしフラれても、いまこれだけ楽しい気持ちを感じさせてくれていることに、感謝できるよ」。
卑屈になってた彼女の、何年かぶりの、スッキリとした笑顔。友達として、とっても嬉しくなった。
30代になると、仕事に打ち込み自立できる基盤が、ある程度作れている。誰かにすべて依存したり寄りかかったりしなくていいからこそ、改めて純粋に、相手に向き合える余裕を持てるのかもしれないね。
亭主関白でも愛妻家キャラのイクメンでも、妻にとっては息苦しい理由。
何も結婚に幻想を抱いているのは、未婚の女性ばかりではない。既婚者だって同じ。結婚したとしても、「家族とはこういうもの」というイメージが強いと、お互いに息苦しい。
「オレはこんないい夫だよ〜!」って理想の家族イメージをアピールし過ぎちゃうと、表では幸せそうでも裏で「旦那の理想が強くて息苦しいんだよね」とこぼす妻は、意外と多い(ごめん、これ現実)。

そのスタイルが古典的な亭主関白であっても、イクメンであったとしても関係ない。
とにかく、何かのテンプレートに閉じ込められるのは窮屈。相手のイメージを体現するために、「良き妻、良き母」もしくは「バリキャリ」な妻像を求められ、それを演じないといけなくなった瞬間に、疲れちゃうから。
だから、愛妻家の旦那さんがいても、息抜きしたくて、彼氏を作っちゃうことが、あるんだと思う。
もっと自由に、「その人とわたし」でいい。周りに見てもらいたい「理想の家族」ではなくて、二人から自然に生まれる家族のスタイルを作っていけばいい。そうすると、「長年一緒にいても、今が一番しっくりくる」。そんな関係性を、少しずつ作っていける。
50年一緒にいたら「変わる」のが前提で
結婚は、したら終わりではなく、とても長いスパンのもの。例えば結婚してから50年、一緒にいるとして「変化を楽しめる、相手と自分でいられるか?」がポイント。
一年一年、相手が変わっていくことを許容できるか?
ある日、リストラされたり、転職して、仕事も稼ぎも変わるかもしれない。
考えや価値観も、今とは違うものに変わっていくかもしれない。
愛情の対象だって、変わるかもしれない。
その時「あの時は良かった。昔はああだったのに、こうだったのに。今はなんで?」なんて言って変化を受け入れられないと、お互いに辛くなる。
だって、この世は「諸行無常」なんだもん。
「わたしの結婚に必要な条件項目を満たしてるから、この人と結婚しよう」と思った相手だったら、厳しいだろうね。どれか一つでも条件が当てはまらなくなったとき、辛くて、「こんなはずじゃなかった」ってなって、離婚しちゃう。
それ以前に、「存在として、その人を愛しているか?」。その上で、「生活を継続していくために、良い環境をお互いに与えられ続けられるか?」。このふたつが含まれる関係性でないと、受け入れがたいだろう。
変わらない愛なんてない。まずは自分の足元を整えよ
結婚は、フラットにみれば、一枚の紙切れ。同棲していた昨日と、籍を入れた今日は、日常で言えばなにも変わらない。
家族というコミュニティに対する綺麗なイメージを持ち、ともに作り上げていくにしても、物語は物語だと冷静に受け止めて、「変化」を前提にとらえていけるかどうか。
変化が怖い時は、自分に基盤がない時じゃないかな。相手がいないと成り立たない人ほど、相手が変わらないでいてほしいと思うし、執着しちゃう。
反対に、自分自身の基盤があれば、余裕が持てる。経済的にも、心の面でも。女でも男でもね。
「結婚すればなんとかなる」
「結婚さえすれば、問題はすべて解決され、幸せになれる」
結婚は、魔法じゃない。毎日の中でどう関わり合っていくか。変化を楽しめるか。そう考えるほうが、お互いにいい関係を続けていきやすいと思うよ。
通気性の良い家族コミュニティとは
そんなわけで、「結婚さえすれば」なんて思っていると、その期待が裏切られた時に、「愛されてるジブンじゃなきゃ、価値がない」「一緒にいないと生きていけないから、がまんして一緒にいる」という状態になって、苦しい。
うまくいってるカップルの特徴としては、いい男は「囲わない、支配しない」。いい女は「自分で立てる」。それが例え、主婦であっても、たくさんの稼ぎがある男性であっても。
相手は相手で、自分がいなくても生きていけるくらい、自立させる。応援する。「それでもあなたといたい」と言ってくれれば、一緒にいる。
そうでなければ、仕方ないと言える。自分の必要性を優位性で担保しないで、自由に選択できる状況にしてあげる。
その上で結婚生活を送ってる。
だからもし、あなたが「相手に〜してもらえるから、結婚したい」と思ううちは、しないほうが幸せかもしれない。結婚は、相当面倒くさい部分もあるからこそ、一人の時よりもうちょっとだけ、努力させてもらえるものだから。
自分を幸せにしてもらおう、というのではなく、自分と相手を幸せにしよう。
そんな気持ちで、行動できる自分になれるか?
そうしていけると、一人でも立てるけど、ふたりでいる状態がもっと幸せになれる。何かがあったときのリスクを回避できるし、ふたりがともにいることの意味が、もっと深まるはずだよ。
「結婚さえすれば系」への、おくすり

- キラキラするなら、相手に委ねる夢の中じゃなく現実の自分の努力で
- 結婚を意識しすぎて卑屈になるんじゃなく、いつも素直にいること
- 「家族とはこういうもの」テンプレートに縛られないで、自分たちなりのスタイルを作ること
- 経済的にも精神的にも、自分自身の基盤を培い、余裕を持つこと
- 条件は見るけど縛られず。「変わる」が前提で、お互いの変化を楽しむこと
- 「自分を幸せにしてもらおう」ではなく「自分と相手を幸せにしよう」そんな気持ちで行動してみて
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ヒビノケイコ
4コマ漫画エッセイスト。9年前京都から高知の山奥、嶺北エリアに移住。自然派菓子工房ぽっちり堂オーナーをしつつ、作家・講演活動をしています。新しい時代に必要な視点と、多様なライフスタイルを地域から発信中。移住、ローカル、女性の軸、仏教、子育て、アートがテーマ。 ブログ「ヒビノケイコの日々」http://hibinokeiko.blog.jp
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