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【連載】子どもたちの手前みそづくりの思い出が、未来の食を変えるかもしれない|発酵とすはだのおいしい関係(14)
2016.06.12
手前みそ文化を広めるべく、日々みそづくり教室に奮闘しています。
今年から、山梨県甲州市の公立の全保育所(と言っても4園ですが)の年長さんの食育活動に、手前みそづくりが加わりました。昨年、2園で始めたのですが、その手前みその出来が好評で、今年から全園で導入されることになったのです。
日々の記憶の蓄積

今回は、去年の年長さんが作った手前みそを給食で食べている2つの保育所の、合同での仕込みでした。日頃から手前みそを食べているということもあって、いつものみそづくりとは少し様子が違いました。
みそづくりの工程のなかで、原料である「こうじ」を細かく砕く作業では、たいていの子どもたちは、初めて嗅ぐ「こうじ」の独特な香りに驚いてしまいます。ある時は、驚きのあまり涙してしまう子もいるほど。けれど今回は、自ら「こうじ」の香りを嗅ぎ、「いい香り~」と微笑んでいるではありませんか!
日頃から、丁寧につくられた給食と風味豊かな「手前みそ」を食べている子どもたちなので、「こうじ」もいい香りと感じることができたのかもしれません。
体験して味わう豊かさ
みそは調味料としては、完成品ですが、料理としては未完成のものです。手前みそを仕込んで、発酵して完成ではなく、調理されて初めて完成します。この保育所の子どもたちは、恵まれたことに、完成された手前みそ料理を給食で味わっています。

この日の給食は、前年の手前みそで作った具沢山の味噌汁と、鯖の味噌煮。みそは濾されてなく、「こうじ」のつぶつぶもしっかり残っています。いっしょに給食を食べながら、「これが、米こうじだね。こっちが麦こうじだね」と話すと、先ほどまでのみそづくり体験と、目の前の給食がつながり、味と香りを記憶していきます。この日の給食の時間は、なんて豊かなひと時だったでしょう。
子どもから大人へ

みそづくりが終わると、私は子どもたちに感想を聞くようにしています。どうだった?楽しかった?と、聞くと、ほとんどの子どもが「たのしかったー!」と笑顔で答えてくれます。その返答に私は、「じゃあ今日、楽しかったことをしっかり家族にお話してね」とお願いします。
子どもがしてきた楽しい体験に、親もきっと喜んくれるはず。そして、あれ?我が家のみそはどんなおみそかな?と冷蔵庫を覗いてもらえたら嬉しいです。
家庭の食卓を変えること、親の意識を変えることは難しいです。でも、子どもが食に興味を抱いたらお母さんはどうでしょう。子どもの楽しい体験から少しずつ、家庭の食卓を変えていけるような、そんな活動ができればいいなと思っています。
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五味洋子
山梨県甲府市出身。東京農業大学醸造科学科にて発酵学を学ぶ。卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年、味噌屋への帰郷を決意。みそ屋の六代目を務める実兄と発酵兄妹として手前みそ文化や、発酵文化を伝えるため日々奮闘中。
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