
みそ屋の考えるみそのおいしい食べ方は、シンプルに「みそ汁」にする方法。ということで、今回はみそ汁のお話です。
私の1日は1杯のみそ汁ではじまります。体調のすぐれない朝も、飲みすぎてしまって、からだが重たい朝も、みそ汁を口にするだけで、からだの中からめきめきとエネルギーが湧いてくるような感覚になります。
そして、みそ汁の具で季節も感じることもあります。最近は大葉やミョウガの具が入っていると、夏だな、と朝からさわやかな気持ちになります。
そして、みそ汁の具で季節も感じることもあります。最近は大葉やミョウガの具が入っていると、夏だな、と朝からさわやかな気持ちになります。
お宅のみそ汁は?

ところで、みそ汁と聞くと、どんなものを頭に浮かべますか?
お豆腐とわかめの入ったもの。
お魚のアラが入っているもの。
野菜がたっぷり入っているもの。
前回お話ししたように、みそは種類も豊富で、出汁や具によってアレンジの仕方は千種万様。一口にみそ汁と言っても、頭に描くみそ汁はきっと人それぞれ。
ちなみに五味家の定番みそ汁は、こちらです。


- 出汁:にぼし
- みそ:甲州みそ(※)
- 具:玉ねぎ、ニンジン、油揚げ
週に3〜4回は、このみそ汁が朝食に登場します。常備野菜を使ったシンプルみそ汁ですが、野菜の甘みと、甲州みそのまろやかさと出汁のバランスが絶妙な、我が家の定番です。
(※)甲州みそ:山梨県の郷土みそ。米こうじと麦こうじを合わせた全国的にもめずらしい調合みそ。ほうとうによく合う。
旬を味わうことがミソ
使うみそは同じでも、出汁や具によって味や香りが変化するのが、みそのおもしろいところ。みそ汁は、みそ、出汁、具のそれぞれの旨味が渾然一体となっておいしさが生まれるのが魅力です。
みそ汁に定番も正解も不正解もありません。ただ、大切なのは、旬を味わうこと。これに限ります。
旅行に行ったとき、その土地のみそ汁を味わうことが旅の楽しみでもあります。海の近くでは、魚のアラで出汁をとったみそ汁に、思わず「ぎょぎょっ」とすることも。けれど、スーッとからだに染み渡り、ペロリとたいらげてしまいます。
いつもの食卓に、いつもと違うみそ汁を並べたら、慣れない味に戸惑ってしまうかもしれませんが、その土地の空気も一緒に味わうことで、なんだか地元の人の仲間入りをしたような気がしてきます。
実家を離れて一人暮らしをしたときも、母のみそ汁を真似ようと、同じ出汁や具を使いましたが「実家の母の味」にすることはできませんでした。「味わう食材はもちろん、土地の風土や空気も一緒に食べるものなのだな」と、1杯のみそ汁から、考えさせられたりします。
みその塩分は敵じゃない
そんな、風土によって、少しずつ味の違うみそ汁ですが、「みそ汁はしょっぱいから……」と敬遠している人もいます。みそ自体は保存食なので、12%ほどの塩分を含みますが、みそ汁の塩分は、じつは意外と多くありません。
たとえば……
- みそ汁1杯(150g)の塩分量はおおよそ1.4g
- 梅干し1個(10g)の塩分量はおおよそ2.1g
- カップラーメン1杯(75g)の塩分量は、おおよそ5g
このように、比べてもそれほど塩分量が多くないことがわかります。
どうしても塩分は控えたいというときは、塩分の吸収を防ぐ緑黄色野菜や、イモ類、海藻類と組み合わせるのがおすすめです。
夏場になると、みそ屋にやってくるお客さんも、熱中症対策の塩分補給にと、みそを購入していく方が多いです。朝食でつくったみそ汁を、お昼に冷たいまま飲むのがお気に入りという方も。

ほっとしたいときに、元気を出したいときに、一杯のみそ汁が、そっと心をほぐしてくれるかもしれません。季節の味、風土に育まれた豊かな食材を、ふんだんに盛り込んだ、あなただけのみそ汁ライフを、楽しんでみてくださいね。
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五味洋子
山梨県甲府市出身。東京農業大学醸造科学科にて発酵学を学ぶ。卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年、味噌屋への帰郷を決意。みそ屋の六代目を務める実兄と発酵兄妹として手前みそ文化や、発酵文化を伝えるため日々奮闘中。
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