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【連載】目に見えないけどスゴい!こうじのチカラ|発酵とすはだのおいしい関係(5)
2015.10.10
前回、目に見えないこうじって何?というをお話をしました。今回は、こうじのすごいチカラをお話しようと思います。
こうじは酵素の宝庫
こうじのヒミツがすぐに分かる「こうじのうた」に、こんな歌詞があります。

分解チョキチョキ、分解チョキチョキ、うまみます、あまみます、
こうじは、100種類以上の酵素を持っている、酵素の宝庫です。「ん? 酵素??」って思いますよね。まずは、酵素は何かを簡単にご説明します。
「お米を口の中に入れてずっと噛んでいたら、お米が甘くなった」という経験をしたことはありませんか?
このお米が甘くなる現象は、酵素によるはたらきによるものです。
お米のデンプンが、唾液に含まれる「アミラーゼ」という酵素によって分解され、ブドウ糖になり、甘みを感じるようになります。つまり酵素は、体内で食べものが消化吸収されやすいように、分解するハサミのようなもの。だから「分解チョキチョキ」というこの歌詞は、酵素のはたらきを説明したものなのです。

そして、「うまみます。あまみます」という歌詞。
甘みは、上記のように「アミラーゼ」という酵素によってつくられます。一方うまみは、「プロテアーゼ」という酵素が、たんぱく質をアミノ酸にチョキチョキ分解するのです。
発酵によって食材に甘みやうまみが生まれるのは、まさにこうじ菌のつくりだす酵素のおかげ。
余談ですが、最近耳にする酵素入り洗剤も、酵素の「分解チョキチョキ」によるもの。皮脂や袖口の汚れを落とすために、たんぱく質や脂肪を分解する酵素を含んでいるのです。
こうじができるまで
こうじは、穀物にこうじ菌を生やしてから3日でできます。菌糸がモコモコ伸びていくときに酵素も生成されるのです。その間、醸造家の職人たちは、菌がうまく生えるように温度管理をして育てます。
米こうじを育てているようすを、五味醤油の現場の写真を交えて簡単に紹介します。
蒸しあがった米を冷ましているところ
原料である米を十分に吸水させたのち、米を蒸し、麹菌が生えやすいようにします。蒸しあがった米は80度ととても高温なので人肌まで冷ましてから菌を種付けていきます。こうじ菌は温度が高すぎても低すぎても育ちません。

蒸しあがった米、炊いた米よりかは硬いが、米の表面には十分に水分が入っている。
ここから約3日間、こうじ菌が育つように温度を見ながら「手入れ」をしていきます。職人はこうじに触れるだけでおおよその温度が分かるのです。そこで、こうじの様子を観察しながら、温度を上げ下げし、調整していきます。
ちなみに……「手入れ」とは、かたまりになったこうじをほぐして、品温を下げて余分な水分を発散させる作業のことをいいます。菌糸が伸びていくと、こうじがかたまりになり、こうじ自身の発酵熱で品温が上昇していくため、適宜調整が必要なのです。「手入れ」の名の通り、五味醤油ではすべて手作業で行っています。
こちらは、こうじづくりをする「麹室」。四方に杉材を使用しています。杉は腐りにくく、虫をよせつけないと言われています。

こうじ菌を種付けしてから、約60時間後(約2日半)
モコモコとこうじ菌の菌糸が伸び、立派な米こうじが完成しました。この菌糸に酵素がたっぷりとつまっています。こうじづくりは温度管理が一番大切です。こうじ菌が育ちやすい温度をつねに管理していくことが職人の仕事なのです。
みその場合は、煮た大豆とこうじと塩を合わせて、発酵をさせます。大豆の良質なタンパク質をこうじの酵素が「分解チョキチョキ」して、「うまみ」を作り出します。また米こうじの米も、酵素が「分解チョキチョキ」して、「甘み」を作り出し、さらにこの「甘み」を酵母菌と乳酸菌が分解して、みその芳醇な「香り」や保存が効くように「酸」を作りだします。
まさに、菌のバトンリレーによって発酵食品はつくられているのです。これはすべてみその桶のなかで勝手におこなわれている、菌たちの営み。この菌のリレーの第一走者が、職人によってじっくりと育てあげた「こうじ」というわけ。
こうじは伝統的な発酵調味料を作り出す、大事な大事な存在です。
日本の素晴らしい食卓を残していくには、こうじの力が必要不可欠なのですね。こうじって、すごい!
日本の素晴らしい食卓を残していくには、こうじの力が必要不可欠なのですね。こうじって、すごい!
★★★
★「好き」な気持ちがキレイを引き寄せる
★発酵のチカラでおいしく美肌を手に入れよう!-
五味洋子
山梨県甲府市出身。東京農業大学醸造科学科にて発酵学を学ぶ。卒業後、2009年ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや、新規事業部で商品企画を担当。2013年、味噌屋への帰郷を決意。みそ屋の六代目を務める実兄と発酵兄妹として手前みそ文化や、発酵文化を伝えるため日々奮闘中。
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