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コラム

【連載】"わたし"の時間、"母"の時間|母さんと呼ばないで(3)

2017.01.30

子育て, 母さんと呼ばないで, 母親, 生き方

一人の女性として「母になること」と、個人である「私」として生きていくことを考える、短期連載「母さんと呼ばないで」。最終回は、母として、そして一人の女性として生きていく時間への想いの変化について語っていただきました。

 

***


藤岡聡子さん
食事ぐらいゆっくり食べたいものですが、現実はこうですね。

先日、出産した友人と久々に再会しました。その友人は仕事柄、妊婦や夫婦に会うことが多く、母になることについて人よりも多く知識を持っていました。そんな友人が「色々聞いてわかっていたわたしでも、同じように悩むものなんですね」というのです。

友人と話をするうちに思い出した、子育てをして初めて経験した、時間に対する考えについてお話しします。

かつてはあった“自由な時間”


「お母さんになると、自分だけの時間なくなるもんね〜」といわれることがあります。大げさかもしれませんが、産前を100パーセントとするなら、自分の好きなように過ごせる時間は10パーセントくらいでは?と思います。

行きたいなと思うワークショップ、講座、飲み会などは大抵夜の時間。1人目の子育ては何をするのも初めてで、お風呂、授乳、寝かしつけと育児のゴールデンタイムに用事で繰り出せるほど、気軽なものではありませんでした。

産前まで自由に使えた時間が恋しい。他の人が持つ自由さが羨ましい。

なぜわたしは時間が限られてしまうんだろう?

お母さんだから仕方ない、と簡単に割りきれる性格ではないわたしは、夜遅くまで仕事をしたり、用事に出ていく夫をうらめしく思ったものです。

あきらめの連続が子育てなの?


あと1本メールを送りたい。この洗濯を干したい。バスの出発時間に遅れないようにしたい。

そんな願いが、ことごとく叶わない。

「なんだこれは! 苦行か?! あきらめの連続が子育てなのか?!」と、1人目の子育ての最中に思った時期がありました。

子を愛し育てることに喜びを感じる一方で、母としての時間と、わたしが使いたい時間のバランスがうまくとれないことに悩みを抱える毎日。こんなときに、頼りにしたかった母は、もうこの世にはいない。

半べそをかきながら、「親となったことがあきらめの連続だなんて思いたくない。親にしか出来ない時間の使い方をしたい。それならどうにかして“わたしの時間”を思いきり使ってやる!」と思い、考え出したのが親の思考が出会う場を作るという方法でした。

KURASOU.」という団体を立ち上げ、子育てをするには避けて通れない社会問題、例えば政治との関わりや人権など普段、親同士があまり話さないことをあえてテーマにすることで学び、対話し、新しい体験を重ねられる場を作ってきました。

「KURASOU.」での活動を続けるうちに、ようやくわたしは「わたしの時間」を思いきり使っている!と実感できるようになったのです。

いつか来る「取り戻したい瞬間」は今


今は2人目のこどもの授乳も終了し、夜に自分の時間が少しだけ持てるようになりました。最近はふと、父と母の過ごし方を振り返ることがあります。

最期の時間を自宅で過ごすことを選択した、わたしの父と母。父は大学ノート10冊分の日記や手紙、書き物を残し、そのほとんどが闘病のこと、社会のこと、そして家族への想いを綴ったものでした。母は書き物を残しはしなかったものの、孫の笑い声、泣き声が聞こえる環境で静かに最期の時間を迎えました。母がわたしの息子を見つめる眼差しは、やっぱり今でも忘れることができません。

そんな父と母を思い出すと、家族と過ごす時間について、こう思うのです。

子育て真っ最中のわたしが、自分の時間がないだの、やりたいことが出来ないだのいっている期間は、きっと今のほんの少しの間だけ。

もっと年を重ねたときに取り戻したいと願うのが、家族の密度が濃い、今この瞬間なのだと。

そうはいっても、不器用な子育てをしながら、現実の騒々しさに流されていくのでしょうね。だけれど、早くに両親を見送ったからこそ、心に留めて過ごしていかなればなと思います。もしかしたら、父と母からの最後のメッセージなのかもしれませんから。

森の食堂
丁寧な食事と日差しがホッとさせてくれます。あきゅらいず・森の食堂にて

短期連載 「母さんと呼ばないで」は、この回をもっておしまいとなります。身近な友人や、時に育児の先輩の方々にも感想をいただくことができ、貴重な経験となりました。

またどこかでお会いしましょう。そのときももちろん母さんと呼び合わないで、語り合いましょうね。
★★★
★自然由来のものと育む、すこやかな暮らしのヒント
★木の香りで癒され、美のエネルギーを蓄えよう
★わたしらしい「暮らし」ってなんだろう

藤岡聡子

藤岡聡子

1985年生まれ、徳島県生まれ三重県育ち。夜間定時制高校出身。自身の経験から、「人の育ち」「学び直し」「生きて老いる本質」をキーワードに、人材教育会社を経て24才で介護ベンチャー創業メンバーとして住宅型有料老人ホームを立ち上げる。2014年より非営利団体「親の思考が出会う場」KURASOU.代表として、国内外のべ150名以上の親が政治や人権について学び対話する場を運営。2015年デンマークに留学し、幼児教育・高齢者住宅の視察、民主主義形成について国会議員らと意見交換を重ね帰国。同年11月 福祉の再構築をミッションに、株式会社ReDoを起業。2児の母。http://redo.co.jp/

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