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【連載】私たち家族が名前で呼び合う理由|母さんと呼ばないで(2)

2017.01. 9

女性, 暮らし方, 母さんと呼ばないで, 連載

一人の女性として「母になること」と、個人である「私」として生きていくことを考える、短期連載「母さんと呼ばないで」。第2回目は、藤岡聡子さんが家族で呼び合っている名前と、なぜその選択をしたのかについて、語っていただきます。

 

***

 

我が家には、両親を「母さん」「父さん」と呼ぶ習慣がありません。4歳の息子はわたし・聡子を「さと」、父・直(すなお)を「すーちゃん」と呼びます。


「なぜ聡子さんの家は、名前で呼び合うんですか?!」と驚かれることもあり、その度に思い浮かぶことを答えてきましたが、わたしなりに整理してみることにしました。

息子が通う園で撮影

『崖の上のポニョ』に出てくるリサという女性への憧れ

わたしの母は、料理も家事も庭仕事も完璧にこなす上、温厚な性格でした。そんな母に対し、わたしはキャベツとレタスを見分けることもあやしい始末。母が自分の性格と違えば違うほど、「母になる」ことに、得体の知れない不安を感じたこともありました。

 

ですが、ある映画を観て、わたしの中の母親像に転機が訪れたのです。

 

まだわたしが学生だった2008年、ジブリ映画『崖の上のポニョ』を観ました。ストーリーに引き込まれたと同時に、なんて素敵だろう!と思ったのが、主人公宗介の母・リサでした。
 

映画を観たことのある方はイメージできるかと思いますが、リサは、ちゃきちゃきと仕事をし、大股で歩き、子の前でもお構いなしで喧嘩をし電話をガチャ切りし、家事を放棄してふてくされるような女性です。
 

彼女の姿を見て、「あぁなんだろう、この初めて出会った感じがしないのは。まるで自分が将来母になったときの姿をみているようだ」と安心感すら覚えたのです。

 

『崖の上のポニョ』のリサは、「大丈夫、そのままのあなたで母ちゃんになっていきな!」とわたしの背中を押してくれました。

親子はヨコ並びの関係がいい

『崖の上のポニョ』の主人公でリサの息子である宗介は、彼女のことを「リサ!」と名前で呼びます。

 

宗介は映画の中でリサを勇気づけ、励まし、救助のため家を離れるリサを送り出します。その様子は、親に子がついていくという“タテの関係”ではなく、互いが心を通じ合わせ、自立しているいわば“ヨコ並び”の関係のように、わたしには見えたのです。

 

こんな親子関係があるのだと、当時は衝撃を覚えました。
 

自己紹介でもお話ししましたが、12歳で父を亡くしてから、母との関係性を悩み抜いたわたしにとっては、親子関係ほど難しいものはないと思っていたからです。

「言霊」というように、言葉には大きな力があります。家族という、毎日顔を合わせる関係こそ、相手を尊重し、ヨコ並びで生きていくために、どんなふうに相手を呼び、接するのかが大事だと思いました。そのひとつの答えが、名前で呼び合うという方法でした。

 

『崖の上のポニョ』を観てから、いつか自分が家族をもったら、「母さん」と役割の名で呼ばれるよりも、名前で呼び合うことから始めようと、そう決めたのです。

役割と存在は別もの

ここまでいっておきながら、実は呼び方など関係ないのだ、と思う自分もいます。
 

実際、『崖の上のポニョ』を観た後もわたしは母や兄、姉を名前で呼んだことはありません。夫とは、付き合っていた時から結婚した今でも、呼び名は変わっていません。

 

要は、妻と夫、または親と子が「母だから」「子どもだから」と役割を言い訳にしていないかどうか。

役割と、一人ひとりの存在は別ものです。●●だからこうあるべき論」で動くのではなく、わたしはわたしとして動いていく。

 

わたし自身がそう心に決めて生きようとしているからこそ、こだわり続けているのかもしれません。


息子がつくった空にたなびく色紙たち

息子がつくった空にたなびく色紙たち

★★★
★自然由来のものと育む、すこやかな暮らしのヒント
★木の香りで癒され、美のエネルギーを蓄えよう
★わたしらしい「暮らし」ってなんだろう
  • 暮らしの記憶                                 

 

 

 

 

藤岡聡子

藤岡聡子

1985年生まれ、徳島県生まれ三重県育ち。夜間定時制高校出身。自身の経験から、「人の育ち」「学び直し」「生きて老いる本質」をキーワードに、人材教育会社を経て24才で介護ベンチャー創業メンバーとして住宅型有料老人ホームを立ち上げる。2014年より非営利団体「親の思考が出会う場」KURASOU.代表として、国内外のべ150名以上の親が政治や人権について学び対話する場を運営。2015年デンマークに留学し、幼児教育・高齢者住宅の視察、民主主義形成について国会議員らと意見交換を重ね帰国。同年11月 福祉の再構築をミッションに、株式会社ReDoを起業。2児の母。http://redo.co.jp/

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