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傘ブランド「DiCesare Designs」(ディチェザレ デザイン)の個性的な傘ができるまで
2015.08. 2
DiCesare Designs, 傘, 日傘, 職人
ハッとしてしまう見た目。傘の常識を壊す、個性的なデザインが注目を集めるブランド「DiCesare Designs」(ディチェザレ デザイン)の傘は、カナダから来日したデザイナー、ジョン・ディチェザレさんと、京都の選び抜かれた職人さんたちによって生み出された、手作りの傘です。

雨傘「スパイラル2トーン」税込9,180円
カナダ生まれのディチェザレさんは、母国で彫刻を学び、彫刻家として活動をする中で、傘を彫刻に見立てたデザインを思いつき、日本のアートと傘文化への関心が一気に高まりました。そして、2000年には本格的に傘作りを行うため、日本へやって来ました。
初めて見た、日本の傘文化は、ディチェザレさんにとっては驚くことばかりだったといいます。
デザイナーのジョン・ディチェザレさん
「カナダは車社会ですから、傘をさす文化はありません。日本では、雨が降っている日はもちろん、晴れていても傘をさしていて、本当にびっくりしました。
これだけ傘が暮らしに根付いているということは、メーカーや職人さんがいて、マーケット的にもきっと大きい。僕にもチャンスがあるかもしれないと思いました」
実現不可能だった日傘「パラシェル」
こうして日本で傘作りを始めたディチェザレさん。まず最初に浮かんだのは、貝殻のカタチをした傘。そのデザインをスケッチし、プロトタイプの作品を作って、パートナーの傘職人さんを探し始めます。けれど、多くの職人さんから門前払いを受けてしまいます。
「パラシェル クラシコ」税込32,400円
「傘の構造は、全ての傘生地が同じ形で、骨も同じ長さになっています。そして、均一に引っ張り合う力によって釣り合いがとれ、開閉できる仕組みです。僕がデザインした貝殻型の傘は、前後でアシンメトリーで、生地や骨の長さがそれぞれ違う。開閉できないだろうし、できたとしても生地のハリが保てずシワシワになってしまうだろう、と言われました。そのうえ、傘として作るのが難しいデザインのため、仮に作れたとしても、桁違いの金額になってしまうんです」
通常の傘であれば、職人さんは1日に12〜13本ほどの傘を作れるそうですが、ディチェザレさんのデザインだと、作れたとしても1日1本。職人さんたちには、これではとても仕事にならないと思われたそうです。
それでも「パラシェル」のデザインにこだわったのは、単に個性的なものを作りたいというだけではなく、ディチェザレさんの、傘を使う人への思いがあります。
「かたつむりやヤドカリ、アサリなど、自然に生きる生物は身を守るために貝殻を備えています。人間も雨や日差しを避けるために傘を使います。女性の身を守るための、貝殻の傘があってもいいと思いました」
横からみると、ベルエポック時代の貴婦人の帽子のように、美しいシルエットの「パラシェル」。アクセサリー感覚として使える、一味違った日傘。実現はできないかと思われましたが、京都で仕事に対して高いプライドと好奇心を持った2人の傘職人さんに出会い、制作してもらえることになりました。こうして、構想から10年以上の時間をかけて、貝殻のカタチをした日傘「パラシェル」は完成したのです。
自然からのインスピレーションに始まる色鮮やかな傘作り
「DiCesare Designs」の傘は、「パラシェル」だけではありません。
職人さんの手彫りが施された「パンプキン」
現在は、数量限定で作られる、手しごとの「パラシェル」に加え、「パンプキン」や「スパイラル」「クロス」といった名前の、いずれも私たちが想像していたカタチを超えた個性豊かな傘が揃っています。
「パラシェル」を含め、「DiCesare Designs」の傘は、地球や自然からのインスピレーションを受けたものが多いのも特徴です。

「サクラ センブリーチェ」税込20,520円
自然のありのままのデザインを傘に投影するようになった、その原点には、使い捨てではなく、一本の傘を長く大切に使って欲しいという思いがあります。
「2012年の台風のあと、渋谷駅周辺で約8トンの傘のゴミが出たことを知りました。雨が降るたびに、使い捨ての傘ばかり増えてしまいます。地球にやさしくないし、資源を無駄にしたくないですね」
雨傘「クロス2トーン」8,640円
もうひとつの特徴は、その鮮やかな色使い。大胆な単色の傘は、シンプルでどんなシーンでも使える傘のひとつです。
「街中で、みんながカラフルな傘を差していたら楽しいし、待ち合わせにも便利。好きな色が顔に反射して、セラピー効果もあるんじゃないかな。とくにメンズは、もっとカラフルな傘を使えばいいのに(笑)」
ディチェザレさん愛用の「グランデ1トーン」18,360円
8月には、東京の表参道に、念願のアトリエ兼ショップをオープン予定。これからますます「DiCesare Designs」の傘を目にする機会も増えそうです。
次回は、「パラシェル」をはじめとした、それぞれの傘をご紹介していきます。
お話をうかがった人
ジョン・ディチェザレ
カナダのトロントに生まれる。大学で彫刻美術を学んだ後、アートギャラリーやブロンズアートスタジオにおいて長期間に渡りブロンズアーティストとして多様な彫刻プロジェクトを担う。十余年前、アンブレラとパラソルのデザインシリーズを構想。日本の傘文化に感銘を受け、 来日。アンブレラとパラソルのデザインを研究、制作開始。巧妙な技術が織り込まれた、独創性に富んだシリーズを発表。
- 公式サイト「DiCesare Designs」
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中條美咲
昭和64年1月3日 長野県生まれ。 2014年 暮らしの中で出会ったものや人、そこから感じたことを文章で伝えていきたいと思い 「紡ぎ、継ぐ」というブログを始める。” 見えないものをみつめてみよう。” ということをテーマに、書くことを通じて多くの出会いに触れながら、感じる力を育てていきたい。 現在は「灯台もと暮らし」と「PARISmag」にてライターとして活動中。
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